「これ、ありがと」
翌日。洗濯して綺麗に畳んだジャージを入れた紙袋を榊の席に置くと、榊は紙袋の中身を見て一瞬動作を止めた。
「……洗ったの?」
「借りたから」
そう返すと、榊は不可思議なものでも目撃したような、変な顔をした。
「乾かすの大変だったでしょ。急がなくても、もっと借りててくれてよかったんだよ」
「ないと困るかなって」
それに、いつまでもお前の匂いがするジャージを自分の部屋に置いておくのが、どうにも落ち着かなかったんだ――なんて口が裂けても言わないけど。
「……律儀」
その言葉には、感心というよりも、どこか釈然としない響きが含まれている。
借りたものは綺麗にしてできるだけ早く持ち主に返す。それだけの、あまりにも普通のことをしただけなのに。
いまだに一緒に帰るだけで「ありがとう」とメッセージを毎回送ってくる榊の方が、よっぽど律儀だろ。
榊は、畳まれたジャージの端を、ゆっくりと指先でなぞった。
「晴は変なところで丁寧だよね。自分のことは、あんなに雑なのに」
その言葉の意味がわからず、俺は曖昧に笑うことしかできない。
窓の外には、昨日の雨が嘘みたいな青空が広がっている。榊と付き合ってから、もうすぐ一か月が経つ。それは、俺が今まで誰かと付き合ってきた中では随分長い方で。
榊は思ってたよりずっと世話焼きだ。それはこの一か月、付き合ったからこそ知れた、あいつの一面かもしれない。
……でも、まあ。そういうのも、もうすぐ終わる。
もうこれ以上俺の知らないあいつを知りたくない。知らなくていい。
翌日。洗濯して綺麗に畳んだジャージを入れた紙袋を榊の席に置くと、榊は紙袋の中身を見て一瞬動作を止めた。
「……洗ったの?」
「借りたから」
そう返すと、榊は不可思議なものでも目撃したような、変な顔をした。
「乾かすの大変だったでしょ。急がなくても、もっと借りててくれてよかったんだよ」
「ないと困るかなって」
それに、いつまでもお前の匂いがするジャージを自分の部屋に置いておくのが、どうにも落ち着かなかったんだ――なんて口が裂けても言わないけど。
「……律儀」
その言葉には、感心というよりも、どこか釈然としない響きが含まれている。
借りたものは綺麗にしてできるだけ早く持ち主に返す。それだけの、あまりにも普通のことをしただけなのに。
いまだに一緒に帰るだけで「ありがとう」とメッセージを毎回送ってくる榊の方が、よっぽど律儀だろ。
榊は、畳まれたジャージの端を、ゆっくりと指先でなぞった。
「晴は変なところで丁寧だよね。自分のことは、あんなに雑なのに」
その言葉の意味がわからず、俺は曖昧に笑うことしかできない。
窓の外には、昨日の雨が嘘みたいな青空が広がっている。榊と付き合ってから、もうすぐ一か月が経つ。それは、俺が今まで誰かと付き合ってきた中では随分長い方で。
榊は思ってたよりずっと世話焼きだ。それはこの一か月、付き合ったからこそ知れた、あいつの一面かもしれない。
……でも、まあ。そういうのも、もうすぐ終わる。
もうこれ以上俺の知らないあいつを知りたくない。知らなくていい。



