Not only かわいい but also…

2カ月後。夏休みにはいっていた。
 体育祭から正式に恋人になった悠司と薫だったが、教育実習が終わった悠司は隣県の大学に戻り、恋人になって早々に悠司と薫はプチ遠距離恋愛だ。
 悠司は長い休みでも、数日しか実家に帰ることがなかったが、今年は薫が夏休みに入ってからすぐに帰省した。
 薫の夏休みがおわるまでは、実家にいるつもりの悠司に、悠司の母は不思議がっていたが少し嬉しそうにしていた。
 一方、プチ遠距離中の恋人たちは、日ごろ距離を埋めるように、夏休みに入ってからほぼ毎日一緒に過ごしていた。
 昔は薫の家と近所だったが、現在の悠司の実家は二駅ほど離れている。
 今の悠司と薫からすればたいした距離じゃない。
 毎日、どちらかの家に行ったり、悠司の運転でドライブに行ったりと、限りある夏休みを満喫していた。
 そんなある日。   
「ごめんな、つき合わせて」
悠司は今日何度目かの謝罪の言葉を口にする。
「いいよー法律事務所とか来たことないし、興味あったから」
薫は笑いながら答える。
 今日は、二人で映画に行く予定なのだが、その前に悠司の用事で、悠司の父の法律事務所に来ているのだ。
 自分の用事に付き合わせたことを、悠司はかなり気にしているらしい。
 が、薫としては悠司のパーソナルなところに入れてもらっているようで、嬉しいくらいだ。
「けどさ、家で返すっていうのに、拒否るか?普通」
悠司はぼやく。
 父から法律関係の本を借りていて、返そうとしたが、
「事務所に持ってこい」
と、その場で受け取りを拒否されたのだ。
「さすがに、あの厚さの本を、あの量返されて、事務所まで持って出勤するのは嫌だと思うよ」
薫が悠司の父をフォローする。
 分厚い専門書10冊はかなり重かった。薫も運ぶのを手伝った。
「昼おごるから」
悠司はまだ気にしてるらしい。
「ありがとう、じゃあごちそうになろうかなー」 
いつもデートのときは割り勘にしているが、今日はおごってもらうことにする。
 奥村法律事務所で、悠司の父に久し振りに挨拶して、無事に本を返して二人はエレベーターに乗り込んだ。
 昔はご近所同士、小さい薫しか知らない奥村は、薫の成長にかなり驚いていた。
「法律事務所っていっても、普通に事務所だったねー」
薫は事務所の感想を口にした。法律事務所など、テレビのドラマでしか見たことがなかった薫は、実はかなりワクワクしていた。
 が、奥村法律事務所はごく普通の事務机、来客用のソファ、書類がぎっしりのキャビネット、専門書のびっちりの本棚がある地味な事務所だった。
 その地味な事務所に、反社会勢力のブレインをやってます、というような風貌の奥村弁護士が地味に仕事をしているギャップは面白かったが。
「法律事務所ってもさ、ピンキリだから、大手の法律事務所はすげーおしゃれビルの中にあったりするから!オヤジの事務所は本当にキリ!キリ!」
「悪いよーそんなこと言ったら」 
父親の話になると、なぜかちょっと子供っぽくなる悠司にクスクスする薫。
「だって、かなりボロじゃんこのビル」
一昔前の古いエレベーターに乗り込んで、1階のボタンを押しても、悠司が言う。
「それは、まあ」
遅いエレベーターに薫もそこは同意する。
 二人で見るともなしに、扉の上の階数の表示を見上げていると、ドットの荒いパネルに「2」が表示される。
 と、同時にチンとこれもまたちょっと古い音とともにエレベーターが止まって、扉が開いた。
「もー所長はさー本当に人使い荒いよー」
「マキシ、文句言いすぎ。仕事ある方がいいだろ?」
「レイマはブラックに染まりすぎなんだよー」
ものすごく、ものすごく聞いたことのある声と、見たことのある姿が目の前にあった。
 薫と悠司はエレベーターの中で目を丸くした。
 エレベーターの外では、マキシと礼真が二人と同じような表情になっている。
「あっ」
「…あ?」
「っあ…」
「ま?」


See you next heart!!