約束を違えた少女は、孤独な当主の花嫁に望まれる

 それから、しばらく経った頃、月宮家では小さな婚儀が行われた。夫婦(めおと)になる二人と月宮家の使用人だけで開かれるこじんまりとした婚儀だった。花嫁は、美しい白無垢に身を包んでいる。

「こんな婚儀を挙げられるなんて夢みたいだわ……」
「莉羅が婚儀なんて要らない、と拗ねながら前に言っていたからな」
「あれは本心でっ!」
「だろうな、あの家で挙げても俺も息が詰まる」

 旦那様は、今日も当たり前のように私に寄り添ってくれる。

「幼い頃はあんなに白無垢に憧れていたくせに」
「それは!」
「そんな願いくらい叶えてやる。俺は、莉羅の夫なのだから」

 ずっと時が経つのが怖かった。人が変わっていくのも、自分が変わっていくのも、怖かったから。
 それでも、もし前の私に会えるなら伝えたい。時が経つことは……未来は、存外悪くはないのだと。だって、いま私の隣には愛おしい人が座っている。


〈了〉