青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

それからというもの、バスで会うと必ず二人で映画の話をするようになった。

いつの間にか座席の位置も近づいて、私の一列斜め後ろが夏希の指定席。
互いの呼び方も変わった。

しかも「週末に行くつもりやけど、午前中雨降らんといいなぁ」とさり気なくレンタルショップの話題を出せば、「俺も行くかもしれん。分からんけど」などと返されて、当日ばったり出くわすこともあった。

『一緒に行く?』なんて聞いたりはしなかったけれど、あれはほぼ約束といっても良かったのかもしれない。

バスの中、レンタルショップ、まるで二人だけの秘密のようで楽しかった。

二年が終わる頃には、もしかして恋してるのかなぁ自分、なんて思うようになったほどだ。
だからきっと有頂天になっていたんだと思う。

「ねぇ、夏希くん、……――」

自分だけが知っている彼の素顔、そんな優越感に浸って、いつだったか思い切って学校で夏希に声をかけたら、あからさまに避けられた。

意外過ぎて一瞬、頭が真っ白になって、そのあとすぐに身体がカッと熱くなった。

けれど、もしかするとたまたまタイミングが悪かったのかもしれない。
そう考えたりもしたが、別の日も呼びかけても立ち上がって教室を出たり、目を合わさないよう逸らされたり。

学校で避けられていると分かって、あれもかして自分ひとりで舞い上がってたのかなと、恋心は行ったり来たり。
進んでいいのか駄目なのか、どうして避けるのか聞きたかったが、それ自体なんとなく聞けなかった。

なにせバスの中ではいつもの夏希なのだ。

変に追及して今の関係を変えたくはない。
結局、よく分からないまま月日は過ぎて……そして三年の夏頃、ついに夏希はバスに乗ってこなくなった。

さらに立て続けにレンタルショップまで閉店して、夏希との繋がりは完全に途絶えた。

とはいえ学校に行けば会える。
なのに、同じ教室にいるのに、やはり話しかけちゃいけない気がして、そして何も起きないまま卒業した。

あれはおそらく恋だった気がするのだが、私は失恋したのだろうか。

それすらも分からないまま時は過ぎ、可も不可もない平和な高校生活をそれなりに謳歌したあと、県内の大学に進学した。