青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

「――由紀っ!」

講義が終わって教室を出ると、生徒を掻き分けて金髪男子がやってきた。
群衆から頭ひとつか二つほど抜きん出ている夏希はかなり目立っていて、数多の視線を受けている。

気づけば、一緒に教室を出たはずの奈那は冷やかし男の悟と共にどこかへ消えていた。

「同じ大学やったんやね」
「みたいやな……」

もう六月。さすが大学というべきか、中学時代と違って人数もさながら、全員の顔を覚える必要がないので今日まで全く気付かなかった。

そして二人の間にちょっとした沈黙が落ちる。

夏希から呼び止めたくせに、まるで様子を窺うように間が出来るのは昔と何も変わらない。

「なんか、バスで会わんなると話さんなったもんね。高校も違ったし、びっくりっていうか」

気を利かせて思いついたことを口にすると夏希が小さく頷いた。

「まぁ、ばあちゃん死んだけん。バスはな」

「あ……ごめん」

「別にええよ」

学校帰り、夏希は祖父母が入院している間、由紀と同じバスに乗っていた。
閑散とした車内は二人きりのことが多く、だけどあの当時、直接的な繋がりは持っていなかった。

惜しいことをしたと後悔したのは中学を卒業してからで、わざわざ声を掛けてくれたということはそういうことなのだろうか。

「する?」
「ん?」

「連絡先、交換する?」

しかし夏希の反応は今ひとつ。

「あぁ、うん」

スマホを取り出し慣れた手つきでQRコード画面を見せてはくれるが、当たりの悪さを感じる。

由紀はあえて、はにかんだ。

「あれ……違った?なんか私、先走って恥ずかし」

言葉は本心だが深刻にならない程度に言うと、なぜか夏希は前のめり気味に首を振る。

「いや、聞きたかったし!聞くつもりやったから」

それから廊下の端に寄って、数年越しの連絡先交換を行った。

「他にも聞きたかったんやけど、サークルって入った?」

「映研の?」
「おう」

「あー……ちょっと覗いてみたけど、なんか雰囲気?ノリ?違うなぁと思ってやめちゃった」

「マジかっ!!」

ひときわ大きな声が上がって、通りすがりの学生の何人かが夏希を見る。

そうだった。
そういえば前からこんな感じだった。

二人の距離が近づいたきっかけも、この夏希の大袈裟な反応。

ちょっとテンションがあがった時、驚いたとき。
教室では静かなくせに、校門を出ると意外と夏希は人目を憚らない。
しかし今はもう、学校の外か内かは気にしないようだ。

「あぁ、ごめん。俺と同じやと思ってテンション上がった。やっぱ由紀とは気が合うな」

どうやら由紀が映研に入っていなかったのがお気に召したらしい。
夏希は爽やかに、そして以前と同じように笑いかけてくれた。