青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

「夏希?立花夏希っ……!?」

彼もまた、同郷なのだ。

地方のさらに山奥出身の我々は、たとえ高校が違っても県内の大学進学を選ぶと学校が絞られる。それゆえ大学で再会なんてのはよくある話だった。

「陽キャデビューとしとるやん。写真撮ったろ」

後ろの席に座っていた悟は徐にスマホを取り出しレンズを向ける。
瞬間、由紀は中学時代に夏希が隠キャなどと呼ばれていたのを思い出した。

夏希はあの当時、背が低く、学校の中ではいつも無口で読書をしている孤立した存在だった。

卒業後の彼のことは知らないが、高校で背が一気に伸びたのか、相変わらず猫背気味ではあるものの高身長で体格が良い。

さらに服装も派手になって、それを悟は陽キャデビューと呼んだのだろう。
スマホを持ちだした悟の眼差しには明らかに羨望が混ざっていた。

「だっさ……止めてよ、引くわぁ」

眉根を歪め溜息を零すと悟は愛想笑いを浮かべ直ぐにスマホを閉じた。
そして始まる謎の言い訳。

「冗談やって。夏希かっこよなったなぁって皆に知らせよーかと……」

「知らせる必要ないやろ」

悟は性根が腐っているわけではない。ただ馬鹿なのだ。

悟にはハッキリ言ねば伝わらないと中学の経験で覚えたので、間違っていることはそのまま伝えるようにしたところ随分と付き合いやすくなったが、今回はどうにも居心地が悪い。

デビューじゃない。夏希は変わっていない。好きを再現しただけだ。

「あはは、由紀ちゃんなんか怒っとる?」

「怒ってはないけど。そういうのマジで止めた方がいいよ」

「ごめんって!」

机にへばりつきながら唇を尖らせる悟が面倒になって無視すると、隣の席の奈那がぼそりと呟いた。

「悟はいつかなんかやらかしそー……」

「なんやそれ!」

その時間の講義は妙に長く感じた。