青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

「――なぁ、この前渡した脚本読んだ?」

「読んだ!すぐ読んだよ。びっくりした」

それは映画コンクールに出品するための夏希が書いた脚本のことで、読んで欲しいと言われて預かり今も鞄に入っている。
データで渡してくれてもいいのに、わざわざ印刷してきてくれたので惜しみなく書込みを入れているやつだ。

「第一声がびっくりって、なんか思ってたんと違うんやけど」

「褒めてるんだって。恋愛もの書けるんやなぁって驚いて……高校の時に書いてたやつやっけ?すんごい良かった……顔がぐっしょり揉みくちゃなったし」

「本当?」

本当ですとも。
誰かと青春したんだなと読んですぐ理解した。

夏希は恋愛なんかに興味ないという思い込みが覆った作品だった。

これは作り物じゃない。
ロジックや定石を踏んで研究されきった完璧な美しさとは微妙に違う、それを知らないと理解しがたい感情の矛盾や葛藤が絶妙な位置に配置され、まるで製作者の生の声が届いてます的な具合に熱量がある内容だった。

「一人の女の子しか出てこんのに、彼目線?の女の子と、女の子視点の語り口が交差して、すれ違いに心臓がぐわぁっとなったよ」

温度感も、気持ちのすれ違いも、切なくて……。
私は泣いてるんだと気付づいたのは読み終えたあと。

短編映画にぎゅっと夏希の気持ちが閉じ込められていた。
その感動を込めて伝えると夏希の顔が心なし赤くなって唇がちょっと上擦り気味になる。

照れた顔も可愛いな。
そんなことを思った直後に、笑いながらつっこまれた。

「由紀ってやっぱあれやな、テンション上がると面白い擬音が増えがち」

「え、そうなん?」

「ぐわぁとか、ぐっしょり。あとは、びっしり、とかも前に言よったなぁ」

「言ったっけ?てか普通やない?」

「自覚ないのおもろ」

夏希は意外と笑いのツボが浅いらしい。
その後も妙なループに入ったようで他人の顔を見ては笑う。

ある意味で青春の火照りも冷めて、おかげで仲のいい友人の映画コンクールの話に戻れそうだ。

「それにしてもさぁ〜」
「なんか誤魔化そうとしてない?」

「違うって!もう、奈那のとこ戻っちゃうよ」
「ごめんって」

鞄の中から脚本を取り出して夏希に渡すと、ようやく笑いは収まって二人で空いてるテラスを探した。