青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

「――そういや前髪作ったんやね」
「ん?」

「前はデコ出しショートやったやん。まぁ、変わってて当然やけど」

再会したのは随分前だが、二人で歩いていると夏希は突然そんなことを言い出した。

中学時代からの髪型の変化を今更ながらに指摘され、忘れかけていたことを思い出して身体の体温が二度ほど上がった。

「あぁ、なんか全体的に伸ばしたくなって……そしたら前髪はあったほうがいいかなって。私の目、キツいし前髪で緩和的な」

実のところ夏希が好きな女優がロングだったから伸ばし始めたのだ。
そのため今は前髪ありのセミロング。
とはいえ夏希の推しの女優と全く同じ髪型というわけではない。

最大限の努力と妥協故のこれだったのだ。

全員が全員というほどでないが、往々にして海外の女優はスーパーロング。

流石にそこまでは伸ばせなかったし、額を出すとなんだか自分にはちょっと似合わない気がしたので前髪を作った。

そんな風にして伸ばした髪は長くなると勿体なくなるもので、中学時代のようなショートに戻る勇気がなく今に至る。

つまりこの髪型は、淡い恋?がきっかけで、そして今はただ惰性で維持しているものなのだ。
なので夏希に髪型の変化を指摘されると、妙に言い訳がましくなってしまった。

「別にキツないやろ。由紀の目って凛としとるって言うんやない」

「へ、へぇ……」

「前のも良かったで。顔よく見えたし」

「じゃあそのうち切ってみよかなぁ……前髪伸びた頃にでも」

「いや、別に今のがいけんわけやないけど」

「なにそれ。でもちょっと戻してみたいかもって思い始めた」

思い出と共に。
どこで覚えたのか、いい感じに持ち上げてくれるのがむず痒く、由紀は明後日の方向を見る。

そして二人の間にまた妙な沈黙が落ちた。
小さな動揺は思いのほか水面を波打ち、気まずさを逃がす言葉が咄嗟に思いつかない。

しかし今日は夏希の方から話題を変えてくれた。