立花 夏希
橘 由紀
中学時代、苗字が同じ響きの同級生がいた。
「たちばなぁー!」
大学一年の初夏。
講義が始まる数分前、名前を呼ばれて思わず振り返ったら知らない顔だった。
代わりに由紀よりも少し離れた前の席にいた生徒が席を立つ。それに既視感のようなものを感じた。
立ち上がった生徒は殊の外でかかった。
しかも目が覚めるような金髪に、黒地で派手なオーバーTシャツ。首元や手首には、武器かよと突っ込みたくなる程のごつめのアクセサリーを身に着けた男子。
「こっち」
低くて短い言葉なのに、よく通る声だった。
由紀は視線を手元のスマホに戻そうとしたものの、あれ、と思って彼らに釘付けになる。
すると向こうもこっちの視線に気づいたらしく凝視してきて……金髪男子の表情の変化に、あぁやっぱりと今度は納得した。
ゆるく無造作に跳ねたセンターパートの金髪、じゃらじゃらとした太めのネックレスは某ワイルドなカーチェイス映画さながらのストリート系。
見る人によれば韓流アイドルのワイルド系カジュアルともいえなくはないが、きっと”彼”にとっては90年代のハリウッド的装いだろう。
立花夏希、根っからの映画好きな映画オタク。
記憶に強く残るのは黒髪の学生服。
私服姿も見たことはあるが、白Tに無地のシャツと至ってシンプルな装いだった気がする。
しかし”なんで?”とは思わない。
ずっとそうしたいと言ってたから。
いいじゃん、強めの服装も似合ってる。
一緒に評論し合った映画の某マッチョ俳優に憧れていたのを知っていたから、本当に再現してしまっている姿が見れて、ちょっとだけ顔がにやけてしまった。
一方の夏希はというと、にやけ顔の由紀を見たあとすぐに視線を逸らし待ち合わせていた相手と話し始めていた。
「どした?知っとる人?」
「ん。夏希くん……中学一緒の」
「……だれ?全然出てこんのだけどぉ」
中学、高校、大学と同じ進路を辿っている友人の奈那に訊ねられ由紀が何気なく答えると、彼女はちらりと夏希を見たあともピンときてないようで興味なさげにスマホを弄り出した。
すると奈那に代わって今度は後ろの座席にいた男子――西条悟が身を乗り出してきた。
「なに?どした?」
「あの金髪、夏希くんやってさ。ゆっくんが中学に居たって言うけど全然分からん」
スマホを操作しながら由紀の代わりに奈那が答えると、悟はぎょっとして夏希を見た。
橘 由紀
中学時代、苗字が同じ響きの同級生がいた。
「たちばなぁー!」
大学一年の初夏。
講義が始まる数分前、名前を呼ばれて思わず振り返ったら知らない顔だった。
代わりに由紀よりも少し離れた前の席にいた生徒が席を立つ。それに既視感のようなものを感じた。
立ち上がった生徒は殊の外でかかった。
しかも目が覚めるような金髪に、黒地で派手なオーバーTシャツ。首元や手首には、武器かよと突っ込みたくなる程のごつめのアクセサリーを身に着けた男子。
「こっち」
低くて短い言葉なのに、よく通る声だった。
由紀は視線を手元のスマホに戻そうとしたものの、あれ、と思って彼らに釘付けになる。
すると向こうもこっちの視線に気づいたらしく凝視してきて……金髪男子の表情の変化に、あぁやっぱりと今度は納得した。
ゆるく無造作に跳ねたセンターパートの金髪、じゃらじゃらとした太めのネックレスは某ワイルドなカーチェイス映画さながらのストリート系。
見る人によれば韓流アイドルのワイルド系カジュアルともいえなくはないが、きっと”彼”にとっては90年代のハリウッド的装いだろう。
立花夏希、根っからの映画好きな映画オタク。
記憶に強く残るのは黒髪の学生服。
私服姿も見たことはあるが、白Tに無地のシャツと至ってシンプルな装いだった気がする。
しかし”なんで?”とは思わない。
ずっとそうしたいと言ってたから。
いいじゃん、強めの服装も似合ってる。
一緒に評論し合った映画の某マッチョ俳優に憧れていたのを知っていたから、本当に再現してしまっている姿が見れて、ちょっとだけ顔がにやけてしまった。
一方の夏希はというと、にやけ顔の由紀を見たあとすぐに視線を逸らし待ち合わせていた相手と話し始めていた。
「どした?知っとる人?」
「ん。夏希くん……中学一緒の」
「……だれ?全然出てこんのだけどぉ」
中学、高校、大学と同じ進路を辿っている友人の奈那に訊ねられ由紀が何気なく答えると、彼女はちらりと夏希を見たあともピンときてないようで興味なさげにスマホを弄り出した。
すると奈那に代わって今度は後ろの座席にいた男子――西条悟が身を乗り出してきた。
「なに?どした?」
「あの金髪、夏希くんやってさ。ゆっくんが中学に居たって言うけど全然分からん」
スマホを操作しながら由紀の代わりに奈那が答えると、悟はぎょっとして夏希を見た。



