――よし。もう、話そう。
そっと、腕の中の風太を離す。
キミの丸くて綺麗な目。
そこに映る俺がそんなにイケメンならば、こっちの俺もきっと話せる!
「俺、ずっと大変なんです。」
「うん。」
「好きすぎて。触れたくて。抱きしめたくて……愛しくて……風太のまばたき一つで、俺の心臓が暴れてしまうんです。」
「うん。」
「その髪が風にゆれるだけで独占したくて、閉じ込めたくて、それから……えっと……俺、抑える自信ないです。」

「そか。」
俺を見つめる風太の目がふっと和らぐ。
その目に、俺は正直戸惑ってる。
俺の想定では、風太は丸椅子から立ち上がり、申し訳なさそうな顔をして「教室戻ろう」って俺に言うはずなんだ。
そしたら、俺も、頭をかきながら「うん。なんかすみません。」ってベッドからおりて……
えっと。それで。
「――煌人。」
吐息のような静かな声にハッとする。
変わらず風太の目は丸くて綺麗で、そこに映る俺は、不安そうに寄ってる眉毛ですら《《サマ》》になってる。
変な感じだ。
「お前さっきさ、俺の目に映る自分がイケメンだって言ってたよな。」
「……それ、今も思ってました。」
「クスッ……思ってたんかい!あのな、それ当たり前なんだよ。だって、俺から見てるお前は、マジ素敵なド変態なんだから。自分に逆らって、賢者モードになろうとするからおかしくなるんじゃねぇの?」
「風太……。」
「俺が惚れたのは――“洞 煌人”なんだよ。今更ロマンチックな理由をつけようとしても、もう遅いぞ。」
腕組みをしてる、その細い腕。
ちゃんと筋肉もあって決して弱いわけじゃない。
いや、むしろ強い。
さっきも、結構マジで頬掴んだのに俺の力に負けてなかった。
結構な力持ちの風太さん。
いつもはゆるふわしてるのに、今はその欠片もない。
なに、その貫禄。
何が言いたいかと言いますと。
――カッコイイ♡
「煌人?聞いてんのか?」
「はい。聞いてます。俺、受けでもいいです。――あ。いや、違うんです。そうじゃなくて、風太が眩しい……です。」
目を伏せる。
カサッ……
傍に座ってる風太の服が擦れる音がする。
「……どうした?」
風太の優しい声に、ギュッと強く目を閉じる。
「は、早くしてください。勇気をだして“待ち”してんです。」
「は?」
「ん~~……ムチュゥ……♡」
唇を少し出す。
閉じたまぶたの向こうがスッ……と暗くなる。
すぐ近くに、風太を感じる。
――ふわっ
うわーっ……風太の唇って、フカフカしてて柔らかい……
あぁ、サヨウナラ。俺のファーストチュー。
本当は俺からやりたかったやつ。
少し悔しい。
少し心残り。
少し――後悔。
あーん、やっぱり俺からやりたかった。
そろっと目を開ける。
ニヤニヤとした風太がいる。
「んん!?」
風太の手が俺の唇に何かを押し当てている。
なんと!!風太の唇ではないと!?
じゃぁ、これはなんだ!!
風太の手を掴み、自分の目でしかと確かめる。
「……。」
小さなヤドカリと目が合った。
「ヒィ!!コイツはいつぞやの!!」
風太がニカッと笑う。
「コイツ、俺の宝物。いつもポッケに入れてんだ。」
「忌々しい……そいつは打ち捨てて、俺の手をポッケに入れてみませんか?」
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――教室。
窓際の席から、風太を眺める。
あ、また誰かに話しかけられてる。
あ、肩を触られた。
ゆるっふわっと華麗にかわして、穏やかに座る。
その後ろ姿から聞こえる。
『誰だ、お前。』
クスッ……
うん。俺もその人、誰か分かりません。
どこから湧いたんでしょうな。
クスクス……
――トンッ。
俺の机を遥人の指が叩く。
「なん、ですか?」
「俺、アイツ気に入った。」
ピクッ……。
――来たな。
嫌な予感がリアルになって俺に迫ってる。
「アイツって、誰ですか?」
「言わせる~?……光星風太。」
視界のピントを、風太から遥人へと移す。
俺にそっくりな顔が口の端だけで笑ってる。
その口元から目へ、視線をスライドさせる。
遥人の目は、笑ってない。
「そうですか。でも、やめてください。」
「俺の自由じゃん。」
「そうであっても。です。」
「彼、活きがよくて可愛いね。あと、いい匂いする。」
首を傾け、俺を覗き込んでニヤリと笑う。
机の上にある遥人の指を払い除ける。
「それ以上、変な目で見たら――殺す。」
「おー、怖い怖い。」
遥人がパッと両手を上げた。
なんだ?
なんなんだ?
あんなに気に入らないって態度に出しておいて、気に入っただと?
――ふたりに何があった?
そうだ。遥人の転校初日、朝のHR中にふたりが席を外して――その後からだ。
俺だって何となく気にはなってた。
風太の様子が良くも悪くも変わったから……。



