┈┈┈
┈┈┈┈┈┈
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
目覚まし時計が……
――鳴る!!
スチャッ。
「フッ――。今日も勝ちました。」
時計の頭を押さえつける指をゆっくり持ち上げ、ろうそくを消すように息を吹きかける。
連勝です。
親愛なる風太さま。
キミに恋してからずっと、俺は目覚まし時計に勝っています!!
だってだって、朝が楽しみだから!!
「今日はどんな風太かなぁ♡もしかしてハムちゃんかな。いや待て、牙ハムかな。それとも~……塩?グハッ……塩っ……♡」
いそいそと支度をする。
ドアを開ると、目の前に真っ白な世界が広がった。
「おお!雪ぃ!積もったかぁ、そうかぁ。」
拍手をしながらしゃがみこむ。
「早起きってこういう時のためにあるんですよね~。ふふっ。」
ガサガサッ。
キュッキュッ……
「よし。」
立ち上がり、スマホを見る。
「おっと、行かねば!」
大きく足を踏み出す。
大丈夫。
俺は雪で滑って転んだりはしませんよ。
足の裏から響く雪の感触に口元が緩む。
通い慣れたこの道。
毎日、毎日、キラッキラなんです。
この先には、俺のハムちゃんが待ってるから。
――あ。居た。
雪をかき消すほどの輝きっ。
眩しいっ。
自然発光する俺のハムちゃん!!
すごい!!
「おはようございます。俺の足裏がキュッキュッ、ハートはキュンキュン、風太=キュッ♡」
ベシッと俺の脳天に、風太の手のひらが振り下ろされる。
「誰が自然発光だよ。朝からほんっと訳わかんねぇ。」
「ありゃ。また漏れてましたか。照れますね♡」
「漏れてねーわ!叫びながら走ってきただろうが!」
「ぐわー、それは相当照れます♡」
風太がおでこに手を当て、ふるふると首を振る。
「はぁ……お前は朝から元気でいいな。こっちは低血圧で全部がめんどくさいよ。」
「早起き頑張るハムちゃんにはこれを。手、出してくださいっ。」
「あ?なんだよ。……ほい。」
気怠そうに適当に手を出す風太……。
――イイ!!
気怠いくせに“お手”ですかっ!!
「その前に、その手を今すぐ石膏で型取りしても?」
「きしょ。普通に引くわ。」
風太がピッと手を引っこめる。
その指先を捕まえ、包むようにそっと開いていく。
「――おっ。」
小さな声と一緒に、風太のまつ毛がくるんと上がった。

「え?これ、雪うさ……」
「ジャーン!雪エロうさちゃんでーす!」
「普通に雪うさぎって言え。エロなんかねぇぞ。」
わぉ。
風太のお目目が皿のようにシラッと冷ややか。
その冷たさで俺もフローズン!!
「何言ってんすか。ほら、手のひら見てください。……俺たちの手の中で溶けていってますねぇ。」
「あ。溶けちゃう……早く学校持ってこうよ。」
風太の眉が下がる。
「いえいえ、ほら見て。溶けてく、溶けてく……。」
「だーかーら、早くって!」
風太の耳元で囁く。
かなりのイケボで。
「俺たちの共同作業ですよ。照れますね。ふたりの体温で溶けていくなんて。」
ドヤァ。
風太の顔を覗き込むと、とんでもないふくれっ面がそこに居た。
「え。なぜに不機嫌?」
「サイテー。雪うさぎに噛まれてしまえ。」
ガーーーン……
┈┈┈
┈┈┈┈┈┈
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
――学校。休み時間。
はぁ~……
口の中から俺の魂でも出てきそう。
「なんだよ、深呼吸なんかして。」
朝の遥人は、鬱陶しい。
「ため息ですよ!バカな兄貴ですね!」
速攻で噛み付いてやる。
「――あ?今、俺様になんつった?」
遥人の手が俺の首根っこを捕まえる。
すぐに口を一文字に閉じる。
「お前がここに居られるのは
誰のおかげだったかな?」
遥人が俺の首根っこをゆさゆさと揺さぶる。
「……遥人です。」
「はい、正解です。」
パッ。
俺を離す。
手を三度払い、遥人は席に戻っていった。
俯きながらその姿を目だけで追う。
くそぅ……逆らえねぇ……。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が魔鹿ランドに、通年のアトラクション運営企画を祖父母に持ち込んだ時、後押ししてくれたのが双子の兄・遥人だった。
祖父母に理由を尋ねられ、俺は迷いなく言った。
「想い人ができたので、安心して腰を据えていたい。」
「――風太くん、かな。」
祖父母の静かな声にちょっとビビった。
取ってつけたような理由など祖父母にはすぐに見抜かれてしまう。
だから、本音を伝えた。
「もう、引越しばかりは嫌なんです。俺も故郷ってものが本気で欲しくなりました。」
その時、ポケットの中でスマホが震え始めた。
“――あ、多分、風太だ……。”
ほんの一瞬、気を取られたのを祖父母は見逃さなかった。
「まずは、スマホを預かる。会議資料を作ることに専念せよ。」
連絡手段は絶たれた。
俺もそれでいいと思った。
だって
――本気だったから。
片手間で作った資料なんて、祖父母には通用しない。寝る時間も削って数え切れないほど練り直した。
その時に、遥人が手伝ってくれたんだ。
「面白そうじゃん。俺も引越しはうんざりだ。その話、乗った。」
本当は大好きなゾンビの企画には、遥人から厳しい意見をもらった。
「もう、やりつくしてんだよ。夏だけならクオリティも集客も申し分ないさ。だが通年は厳しい。ゲストの飽きが来る度に経費がかさむ。」
「じゃぁ、どうすれば……。」
「俺のシロクマ企画で一緒にやらないか?」
ここからだった。
俺が風太の元に戻るための全てが
――動き出したのは。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
机の上に突っ伏す。
顔にかかった髪越しにぼんやりと風太を眺める。
あ~、後頭部が超おこ。
どうもダメですな、俺。
さっきだって、本当は風太に雪うさぎを
あげるつもりだったのに。
触れた風太の手が、
キンと冷たくて……
俺が来るよりもずっと前から待ってたって
気づいちゃったらさ……
「マシュマロ食いたくなるじゃん……」
あのふわっふわの頭引っ掴んで、食い尽くしたくなっちゃったんだ。
俺……危ねぇわ。
ほけーー……
――ふに。
唇に何か押し付けられる。
「ん?――マッ、マシュマロ!?」
目を見開く。
鷹野が俺の口元にマシュマロを当て、キョトンとした顔で立っている。
「マシュマロ食いたいんだろ?俺のオヤツ、1個だけやるよ。」
ガシッとその手を掴む。
「んー♡チュッ♡チュッ♡」
ガタッ!!
「うわっ!何してんだお前っ!!」
ザザザッ!!
鷹野が素早く俺から遠ざかる。
まるで虫けらを見るような目つきで俺を見ている。
立ち上がる。
鷹野に突進する。
「鷹野!!それをよこせぇぇ!!」
「うわーーっ!!来るな!!こっち来るな!!」
「待てコラァ!!よこせっつってんだろ!!」
逃げ回る鷹野を追う俺に、更にエンジンがかかる。
――ガシィッ!!
富士川と茄子が俺の腕と腹に絡みつく。
「お前っ……何してんだよ。恩を仇で返すなんてさ!!」
「しっかりしろ!洞!!お前はそんな奴じゃないだろ!!」
「あ……う……」
何だかフラフラする。
――バターンッ!!
「わーーっ!洞がショートしたぞ!」
バリケードが大騒ぎしてる声が
遠く、
聞こえた――……
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目覚まし時計が……
――鳴る!!
スチャッ。
「フッ――。今日も勝ちました。」
時計の頭を押さえつける指をゆっくり持ち上げ、ろうそくを消すように息を吹きかける。
連勝です。
親愛なる風太さま。
キミに恋してからずっと、俺は目覚まし時計に勝っています!!
だってだって、朝が楽しみだから!!
「今日はどんな風太かなぁ♡もしかしてハムちゃんかな。いや待て、牙ハムかな。それとも~……塩?グハッ……塩っ……♡」
いそいそと支度をする。
ドアを開ると、目の前に真っ白な世界が広がった。
「おお!雪ぃ!積もったかぁ、そうかぁ。」
拍手をしながらしゃがみこむ。
「早起きってこういう時のためにあるんですよね~。ふふっ。」
ガサガサッ。
キュッキュッ……
「よし。」
立ち上がり、スマホを見る。
「おっと、行かねば!」
大きく足を踏み出す。
大丈夫。
俺は雪で滑って転んだりはしませんよ。
足の裏から響く雪の感触に口元が緩む。
通い慣れたこの道。
毎日、毎日、キラッキラなんです。
この先には、俺のハムちゃんが待ってるから。
――あ。居た。
雪をかき消すほどの輝きっ。
眩しいっ。
自然発光する俺のハムちゃん!!
すごい!!
「おはようございます。俺の足裏がキュッキュッ、ハートはキュンキュン、風太=キュッ♡」
ベシッと俺の脳天に、風太の手のひらが振り下ろされる。
「誰が自然発光だよ。朝からほんっと訳わかんねぇ。」
「ありゃ。また漏れてましたか。照れますね♡」
「漏れてねーわ!叫びながら走ってきただろうが!」
「ぐわー、それは相当照れます♡」
風太がおでこに手を当て、ふるふると首を振る。
「はぁ……お前は朝から元気でいいな。こっちは低血圧で全部がめんどくさいよ。」
「早起き頑張るハムちゃんにはこれを。手、出してくださいっ。」
「あ?なんだよ。……ほい。」
気怠そうに適当に手を出す風太……。
――イイ!!
気怠いくせに“お手”ですかっ!!
「その前に、その手を今すぐ石膏で型取りしても?」
「きしょ。普通に引くわ。」
風太がピッと手を引っこめる。
その指先を捕まえ、包むようにそっと開いていく。
「――おっ。」
小さな声と一緒に、風太のまつ毛がくるんと上がった。

「え?これ、雪うさ……」
「ジャーン!雪エロうさちゃんでーす!」
「普通に雪うさぎって言え。エロなんかねぇぞ。」
わぉ。
風太のお目目が皿のようにシラッと冷ややか。
その冷たさで俺もフローズン!!
「何言ってんすか。ほら、手のひら見てください。……俺たちの手の中で溶けていってますねぇ。」
「あ。溶けちゃう……早く学校持ってこうよ。」
風太の眉が下がる。
「いえいえ、ほら見て。溶けてく、溶けてく……。」
「だーかーら、早くって!」
風太の耳元で囁く。
かなりのイケボで。
「俺たちの共同作業ですよ。照れますね。ふたりの体温で溶けていくなんて。」
ドヤァ。
風太の顔を覗き込むと、とんでもないふくれっ面がそこに居た。
「え。なぜに不機嫌?」
「サイテー。雪うさぎに噛まれてしまえ。」
ガーーーン……
┈┈┈
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――学校。休み時間。
はぁ~……
口の中から俺の魂でも出てきそう。
「なんだよ、深呼吸なんかして。」
朝の遥人は、鬱陶しい。
「ため息ですよ!バカな兄貴ですね!」
速攻で噛み付いてやる。
「――あ?今、俺様になんつった?」
遥人の手が俺の首根っこを捕まえる。
すぐに口を一文字に閉じる。
「お前がここに居られるのは
誰のおかげだったかな?」
遥人が俺の首根っこをゆさゆさと揺さぶる。
「……遥人です。」
「はい、正解です。」
パッ。
俺を離す。
手を三度払い、遥人は席に戻っていった。
俯きながらその姿を目だけで追う。
くそぅ……逆らえねぇ……。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が魔鹿ランドに、通年のアトラクション運営企画を祖父母に持ち込んだ時、後押ししてくれたのが双子の兄・遥人だった。
祖父母に理由を尋ねられ、俺は迷いなく言った。
「想い人ができたので、安心して腰を据えていたい。」
「――風太くん、かな。」
祖父母の静かな声にちょっとビビった。
取ってつけたような理由など祖父母にはすぐに見抜かれてしまう。
だから、本音を伝えた。
「もう、引越しばかりは嫌なんです。俺も故郷ってものが本気で欲しくなりました。」
その時、ポケットの中でスマホが震え始めた。
“――あ、多分、風太だ……。”
ほんの一瞬、気を取られたのを祖父母は見逃さなかった。
「まずは、スマホを預かる。会議資料を作ることに専念せよ。」
連絡手段は絶たれた。
俺もそれでいいと思った。
だって
――本気だったから。
片手間で作った資料なんて、祖父母には通用しない。寝る時間も削って数え切れないほど練り直した。
その時に、遥人が手伝ってくれたんだ。
「面白そうじゃん。俺も引越しはうんざりだ。その話、乗った。」
本当は大好きなゾンビの企画には、遥人から厳しい意見をもらった。
「もう、やりつくしてんだよ。夏だけならクオリティも集客も申し分ないさ。だが通年は厳しい。ゲストの飽きが来る度に経費がかさむ。」
「じゃぁ、どうすれば……。」
「俺のシロクマ企画で一緒にやらないか?」
ここからだった。
俺が風太の元に戻るための全てが
――動き出したのは。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
机の上に突っ伏す。
顔にかかった髪越しにぼんやりと風太を眺める。
あ~、後頭部が超おこ。
どうもダメですな、俺。
さっきだって、本当は風太に雪うさぎを
あげるつもりだったのに。
触れた風太の手が、
キンと冷たくて……
俺が来るよりもずっと前から待ってたって
気づいちゃったらさ……
「マシュマロ食いたくなるじゃん……」
あのふわっふわの頭引っ掴んで、食い尽くしたくなっちゃったんだ。
俺……危ねぇわ。
ほけーー……
――ふに。
唇に何か押し付けられる。
「ん?――マッ、マシュマロ!?」
目を見開く。
鷹野が俺の口元にマシュマロを当て、キョトンとした顔で立っている。
「マシュマロ食いたいんだろ?俺のオヤツ、1個だけやるよ。」
ガシッとその手を掴む。
「んー♡チュッ♡チュッ♡」
ガタッ!!
「うわっ!何してんだお前っ!!」
ザザザッ!!
鷹野が素早く俺から遠ざかる。
まるで虫けらを見るような目つきで俺を見ている。
立ち上がる。
鷹野に突進する。
「鷹野!!それをよこせぇぇ!!」
「うわーーっ!!来るな!!こっち来るな!!」
「待てコラァ!!よこせっつってんだろ!!」
逃げ回る鷹野を追う俺に、更にエンジンがかかる。
――ガシィッ!!
富士川と茄子が俺の腕と腹に絡みつく。
「お前っ……何してんだよ。恩を仇で返すなんてさ!!」
「しっかりしろ!洞!!お前はそんな奴じゃないだろ!!」
「あ……う……」
何だかフラフラする。
――バターンッ!!
「わーーっ!洞がショートしたぞ!」
バリケードが大騒ぎしてる声が
遠く、
聞こえた――……



