ある日、ゾンビを助けたら。2

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目覚まし時計が

鳴る!!


スチャッ。



ニヤリ。


時計の頭を押さえつける指を
ゆっくり持ち上げ、
ろうそくを消すように
息を吹きかける。


「フッ――。

 今日も勝ちました。」



連勝です。

風太、キミに恋してから
俺はずっと
目覚まし時計に勝っています!!


だって、
朝が楽しみだから!!


「今日はどんな風太かなぁ♡
 もしかしてハムちゃんかな。
 いや待てよ。牙ハムかな。
 それとも~……超、塩?

 グハッ……塩っ……♡」


いそいそと支度をする。



ドアを開けると
一面が真っ白だった。


「おお、雪ぃ!
 積もったかぁ、そうかぁ。」


拍手をしながら
しゃがみこむ。


「早起きって
 こういう時のために
 あるんですよね~。ふふっ。」



ガサガサッ。

キュッキュッ……


「よし。」


立ち上がり、
スマホを見る。


「おっと、行かねば!」


大きく足を踏み出す。

大丈夫。

俺は雪で滑って
転んだりはしませんよ。



キュッキュッと
足の裏から響く感触に
口元が緩む。



通い慣れたこの道。
毎日、毎日、
キラッキラなんです。


この先には
俺のハムちゃんが待ってるから。



――あ。居た。

雪をかき消すほどの輝きっ。

眩しいっ。

自然発光する俺のハムちゃん!!

すごい!!


「おはようございます♡
 俺の足裏がキュッキュッ、
 ハートはキュンキュン、
 風太=キュッ♡」


ベシッ。


俺の脳天に
風太の手のひらが
振り下ろされる。


「誰が自然発光だよ。
 朝からほんっと訳わかんねぇ。」


「ありゃ。また漏れてましたか。
 照れますね♡」


「漏れてねーわ!
 叫びながら走ってきただろうが!」


「ぐわー、それは相当照れます♡」



風太がおでこに手を当て、
ふるふると首を振る。

「はぁ……
 お前、朝から元気でいいな。

 こっちは低血圧で
 全部がめんどくさいよ。」




「早起き頑張る
 ハムちゃんにはこれを。
 
 手、出してくださいっ。」




「あ?なんだよ。……ほい。」


気怠そうに
適当に手を出す風太……


――イイ!!

気怠いくせに“お手”ですかっ!!


「その前に、
 その手を今すぐ
 石膏で型取りしても?」


風太が
ピッと手を引っこめる。

「きしょ。普通に引くわ。」


その指先を
キュッと捕まえる。

包むように、
そっとその手を開いていく。


「――おっ。」

小さな声と一緒に
風太のまつ毛がくるんと上がった。





「え?これ、雪うさ……」


「ジャーン!!
 雪エロうさちゃんでーす!!」


「普通に雪うさぎって言え。
 エロなんかねぇぞ。」


わぉ。
風太のお目目が
皿のようにシラッと。

その冷たさで
俺もフローズン!!


「何言ってんすか。
 ほら、手のひら見てください。


 ……俺たちの手の中で

 溶けていってますねぇ……」


「あ。溶けちゃう……
 早く学校持ってこうよ。」

風太の眉が下がる。



「いえいえ、ほら、見て。
 溶けてく、溶けてく……。」


「だーかーら、早くって!」


風太の耳元で囁く。
かなりのイケボで。

「俺たちの共同作業ですよ。

 照れますね。
 2人の体温で
 溶けていくなんて。」


ドヤァ。


風太の顔を覗き込むと、
とんでもないふくれっ面が
そこに居た。



「え。なぜに不機嫌?」


「サイテー。
 雪うさぎに噛まれてしまえ。」



ガーーーン……





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――学校。休み時間。



はぁ~……


「なんだよ、
 深呼吸なんかしちゃって。」

朝の遥人は、鬱陶しい。

「ため息ですよ!
 バカな兄貴ですね!」

速攻で噛み付いてやる。


「――あ?
 今、俺様になんつった?」

キュッ。
遥人の手が
俺の首根っこを捕まえる。


「きっと空耳ですよ。」

すぐに口を
一文字に閉じる。


「お前がここに居られるのは
 誰のおかげだったかな?」

遥人が俺の首根っこを
ゆさゆさと揺さぶる。



「……遥人です。」



「はい、正解です。」


パッ。
俺を離す。

手を三度払い、
遥人は席に戻っていった。


俯きながら
その姿を目だけで追う。


くそぅ……逆らえねぇ……。


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俺が魔鹿(まじか)ランドに
通年のアトラクション運営企画を
祖父母に持ち込んだ時、
後押ししてくれたのが
双子の兄・遥人だった。


祖父母に理由を尋ねられ、
俺は迷いなく言った。

「想い人ができたので、
 安心して腰を据えていたい。」


「――風太くん、かな。」

祖父母の静かな声に
ちょっとビビった。

取ってつけたような理由など
祖父母にはすぐに見抜かれてしまう。

だから、本音を伝えた。

「もう、
 引越しばかりは嫌なんです。
 俺も故郷ってものが
 本気で欲しくなりました。」


その時、ポケットの中で
スマホが震え始めた。



“――あ、多分、風太だ……。”



ほんの一瞬、気を取られた。



それを
祖父母は見逃さなかった。


「まずは、スマホを預かる。
 会議資料を作ることに専念せよ。」


連絡手段は絶たれた。

俺もそれでいいと思った。



だって

――本気だったから。



片手間で作った資料なんて、
祖父母には通用しない。



寝る時間も削って
数え切れないほど練り直した。

その時に、
遥人が手伝ってくれたんだ。


「面白そうじゃん。
 俺も引越しはうんざりだ。
 その話、乗った。」


本当は大好きなゾンビの企画。
遥人からは厳しい意見だった。

「もう、やりつくしてんだよ。
 夏だけなら
 クオリティも集客も申し分ないさ。
 だが、通年は厳しい。
 ゲストの飽きが来る度に
 経費がかさむ。」


「じゃぁ、どうすれば……。」


「俺のシロクマ企画で
 一緒にやらないか?」



ここからだった。

全てが動き出したのは。



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机の上に突っ伏す。
顔にかかった髪越しに
ぼんやりと風太を眺める。


――あ~、後頭部が超おこ。


どうもダメですな、俺。


さっきだって、

本当は

風太に雪うさぎを
あげるつもりだったのに。


触れた風太の手が


キンと冷たくて……


俺が来るよりも
ずっと前から待ってたって
気づいちゃったらさ


「マシュマロ食いたくなるじゃん……」


ほけーー……


あのふわっふわの頭引っ掴んで
食い尽くしたくなっちゃったんだ。

俺……危ねぇわ。




――ふに。

唇に何か押し付けられる。

「ん?――マッ、マシュマロ!?」

目を見開く。

鷹野が
俺の口元にマシュマロを当て、
キョトンとした顔で立っている。

「マシュマロ食いたいんだろ?
 俺のオヤツ、1個だけやるよ。」


ガシッとその手を掴む。

「んー♡チュッ♡チュッ♡」


ガタッ!!

「うわっ!何してんだお前っ!!」

ザザザッ!!

鷹野が素早く俺から遠ざかる。

まるで
虫けらを見るような目つきで
俺を見ている。


立ち上がる。

鷹野に突進する。

「鷹野!!それをよこせぇぇ!!」


「うわーーっ!!
 来るな!!こっち来るな!!」

逃げ回る鷹野。


「待てコラァ!!
 よこせっつってんだろ!!」

更にエンジンがかかる。



――ガシィッ!!

富士川と茄子が
俺の腕と腹に絡みつく。

「お前っ……何してんだよ。
 恩を仇で返すなんてさ!!」

「しっかりしろ!洞!!
 お前はそんな奴じゃないだろ!!」



「あ……う……」

何だかフラフラする。


――バターンッ!!


「わーーっ!
 洞がショートしたぞ!」


バリケードが大騒ぎしてる声が
遠く、聞こえた。