ある日、ゾンビを助けたら。2

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俺の隣に煌人がいる。

「ふふっ……狭いっ。」

いつもは眠りにつくまで、
コロン、コロン、って
何度か転がらないと眠れないんだ。

そのうち布団がほんのり温かくなって、俺を柔らかく包んでくれるのを待つんだけど。

今夜は転がれない。

そんなことしなくても
煌人の温かさが俺を優しくしてくれる。

触れてる腕から、染み込むように。

俺の目のすぐ近くの煌人の喉が小さく動く。

「少し端に寄りましょうか?」

心地よく俺の中に響く声。
それだけで胸がいっぱいなんだ。

「ダメ。俺に寄ってよ。」

「そんなのもっと狭くなりますよ。クソゥ……。生まれがチンアナゴだったら良かったのに。」

「ブハッ!なぁ煌人、知ってる?アイツら平和そうに見えて顔出す高さで競ってるらしいぜ。」

「ギャハハ!マジすか!?闘いがシュールっすね!!クククッ」

「だろ?俺も知った時は爆笑したわ!」

頭を上げて笑う。
ぐいっと煌人にくっつき喉元に頬を下ろす。

ふっ、最高のポジション。
俺のどさくさはプロ級だ。

煌人の微かな呼吸の変化まで、俺の頬が独り占めしてくれる。


「風太、いい夜ですね。」

「うん。毎日だといいのに。」

「……明日、風太の頭の重さ測っていいですか?」

「ん?」

「頭の重さです。」

「あ……重かった?ごめん。」

「いえ、この愛しい重さを知りたいです。自宅用に再現してみようかと。」

「アハハハッ!きっしょ!!」


俺が覚えてるのは、ここら辺までくらい。

知らないうちに眠ってた。




おやすみも言わずに。




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――煌人の部屋。


国民の記念日にもなりそうなあの夜から、早くも一週間過ぎてしまった。
椅子に腰掛け、腕組みをして座る俺。

うーむ……。

「はぁ……悩ましいですね。」

切なく首を振る。



――コンッ!
短いノックと共に、ドアから風太が顔を覗かせる。

「きーらと、課題一緒にやろー。ん?どうした?難しい顔して。」

「どうもこうも……はぁ……」

腕組みしたまま、うなだれる。

「世の中上手くいかないですね。俺もうダメです。はぁ……。」

風太が俺の横に立つ。

「なんだこれ。しろくま愛ランドにでも使うのか?」

「これは――こんにゃく芋です。いけると思ったんですけど、違うんですよね。はぁ……。」

「そうかぁ。大変だな、お前も。」

「ええ、苦労が絶えません。しかしこれだけは諦めることはできなくて。」

「うん、煌人のそういうとこ、超かっけーよ?」

風太が俺の目を覗き込みながら、頭を撫でてくれている。

何たる幸せか。
これはやはり諦められないな。

「どうしたらいいですかね。何としてでも決めたいんです。」

「俺で良ければ話聞くぞ?」

「いいんですか!?あのっ、あのですね、風太の頭を再現しようと……」

「あ?ちょっと待てコラ。俺の頭だと?これが?この、こんにゃく芋が?」

「え?なんで怒ってるんですか?」

「怒ってねぇよ。ただ、お前をこんにゃく芋でぶん殴りたいだけだよ。」

こっわ!!
そんなの命揺るがしますやん!
俺はただ、あの夜の風太の頭を再現したいだけなのに。

風太が寝てる間に重さも頭囲も完璧に測って、ぴったり一致したのがこんにゃく芋だったんですよ。

世紀の大発見なんです。

しかし、いかんせん、抱きかかえて眠ってみたが期待はずれも甚だしい。

芋抱いてる感が否めなかったです。


風太が冷たい目付きでこんにゃく芋を指さす。

「これ、どうするつもり?」

「抱いて眠ったんですけど、普通に芋でした。」

「抱いて寝たのか!?捨てろ!そんな奴、捨てちまえ!」

「ええっ!?出来ませんよそんなこと!仮にも俺と一晩明かした芋ですよ?」

「絶対、捨てろ!こんな奴部屋においとくんじゃねぇ!」

「嫌です!絶対に捨てません!俺にとっては大切な芋ですから!」

「俺よりそいつを選ぶのか!?もういい!煌人の大バカ野郎!」

バンッ!!

「あ、風太っ!待ってください!」


……行ってしまった。

こんにゃく芋と目が合う。

「芋太、俺、どうしたらいい?」


“さあね”肩をすくめるこんにゃく芋。



「おいおい煌人、何事?すんげえ勢いで風太出てったけど。」

驚いた様子の遥人がドアから入ってくる。

「おい、聞いてる?――ん?あ、それ、なんだっけ?」

「……こんにゃく芋、です。」

「あー、そうだそうだ。しかし立派なやつだな。3年玉か?」

「ええ。農家を回ってピッタリのを探しましてね。」

「ピッタリって、何に?」

「え、そりゃ、風太の頭の重さと頭囲と湿度にですよ。」

「――は?」

「――え?」

「気持ち悪そうだが一応聞いてやる。――何のために?」

「俺の傍で眠る風太の頭を自宅用に再現したく……」

「わーっ!もういい!言うな!無意識に蹴り飛ばしたくなるっ!」


遥人までそんな……。
俺そんなに悪いことしましたか?
風太にあんなに怒られたら、
もう、シオシオ……。

遥人が小さく息を吐く。

「あーもう、そんな顔すんなバカ弟。よく聞け。それは“芋”だ。ただの“芋”!風太の代わりになんてならん。ちゃんと素直に話して謝ってこい。」

素直に、話す……?
この気持ちを?

「そんな重いこと言えないです。本当は風太と毎日眠りたいなんて。寂しくて眠れてないなんて。」

「芋よりマシだ。行け、アホ。そこらじゅうのカップルが日常的にほざいてるクソ痒い会話にしかならん。安心しろ。」


なんだ。そうなのか。
言ってもいいんだ。

ガタッ。

――ダダッ!



「はあ……いつもは切れ者なのに。恋人には馬鹿で困るわぁ……。」

煌人の座っていた椅子に遥人が座る。
こんにゃく芋を眺める。

「プッ……ほんっとバカだな。」