∞8《インフィニティ・エイト》

 例えばソラが東京の学校で大恋愛をしてその人と結婚したら。

 東京で家庭を持ったら、ここに帰ってくる頻度は更に減る。

 近所に住んでいた小学校の先輩お姉さんも、私が知らない大人になっていた。

 街ですれ違ってもわからないくらいだった。

 毎日一緒にいたのに、赤の他人と変わらないくらい遠くなるんだ。

 高校のクラスメートたちだって、みんな違う進路を選んでいる。

 会えなくなるのが寂しいと思うのは、だめなことなのかな。

 木の葉がひらりと舞い落ちる。

 私はそっと拳を握る。

「兄貴、ちょっとそっちで話そうぜ。言っておくことがある」

 ソラとリクは私から離れ、二人でなにか話し込んでいた。

 言い争っているようにも見える。

 話が終わったのか、しばらくしてリクが戻ってきた。

「俺、用事あるから先に帰るわ。夏美は兄貴と二人で帰ってきな」

「え、う、うん。リク大丈夫? ソラと喧嘩したの?」

「心配すんな。喧嘩じゃねーよ。とにかく、そういうわけだから。兄貴、夏美をちゃんと家まで送れよ?」

 リクはシートを筒にして担ぐと、軽い足取りで丘を駆け下りていった。

 私はソラと二人きりになった。

 いつもなら、気まずさなど感じないのに。

 今日の空気はひどく重たい。