∞8《インフィニティ・エイト》

「夏美が誰の手を取ったとしても、横から奪い取りたい」と言ったのと同じ口で。

 積もり積もった違和感が、ようやく形を成す。

 ……そうだ。なんで今日、ソラは何も言わないの。

 ループが続いているから、他の方法をためそうって話が出てもいいはずなのに。

 今ここにいるソラは、私にキスをしてきた五回目のソラではなく、「昨日(・・)のこと、覚えてる?」とカマをかけてきた四回目のソラでもない。

「……………ソラ」

「ん?」

「……昨日のこと、覚えてる?」

 ソラは、一瞬だけ考えるように目を細めた。

「昨日って、七日? 何かあったっけ?」


 私の中で、何かが音を立てて崩れた。


 ここにいるのは、「八月八日を今日」だと思っているソラ。

 ループの記憶を失っているソラ。
 
「……そっか」

 乾いた声でそう返すのがやっとだった。

 何も知らないソラの笑顔が、痛いほど胸に刺さる。

 ループの記憶を維持しているのは私だけ。