∞8《インフィニティ・エイト》

「今夜もまたループが起きたら、次の夏美はまた、記憶がリセットされちゃうのかな。三度目までの夏美が忘れたように」

「……わからないよ。覚えていられるかどうかなんて」

「こうすれば、忘れないかな」

 言うなり、ソラは私の頬を両手でとらえて唇を塞いだ。

 頭の中が真っ白になる。

 恋愛マンガにあるような、相思相愛の少年少女がするロマンチックなものじゃない。

 何もかも奪いつくすような荒々しいキスだ。

 息ができなくて、もがくように、ソラのシャツを掴む。

 けれど、ソラは腕の力を緩めない。

 むしろ、もっと深く、もっと強く、私の全てを支配するように口づける。

 優しいソラの内側に、こんな熱が隠されていたなんて知らなかった。

「忘れないで、夏美」

 長い口づけが終わり、ようやくソラは私を解放した。 

「ソラ……」

「帰ろうか。あまり遅くなると母さんたちが心配する」

 ソラはさっきの告白もキスも、何もなかったかのように振る舞い、いつもの笑顔を浮かべる。

 忘れないでと言った本人が。

 バスに乗って家路についても、私は顔を上げられなかった。