∞8《インフィニティ・エイト》

「ごめん、夏美。俺、冷静じゃなかったよな。夏美を泣かせたかったわけじゃないんだ。…………悪い。先に帰る」

「リク」

 無理矢理な作り笑いをして、リクはバス停に走っていってしまった。

 そのままバス停にいたバスに乗り込む。

「気持ちを言葉にしてお互い傷つくくらいなら、何も言わないほうが、良かったのかな」

 ソラはハンカチで私の目元を拭ってくれた。

 そのまま私の手を引いて、川辺の遊歩道を歩き出す。

 リクが行ったのとは逆の道だ。

 日差しは暑くて、近くの公園は親子連れで賑わっている。

 みんな明るく楽しそうなのに、私たちの空気だけどんよりと沈んでいる。

 私がうまく答えを出せないから。

「僕とリクは、口にしないだけでお互いの気持ちずっと知っていたよ。いつ相手を出し抜くか、バチバチ火花が散っているような感じ。でも夏美は僕たちの気持ちに全然気づかなくて、もどかしかった」

「……そう、なんだ」

 告白するタイミングが遅いか早いかだけで、私が気づかなかっただけで、二人はずっと互いを恋のライバルとして見ていた。

 どちらが選ばれようと、私が二人を選ばなかったとしても、いつかこの日はおとずれていた。

「僕の部屋にそんな薄着で入れることも、男として意識されてないんだなって寂しくなった。僕が告白した記憶を引き継いでも、平気な顔をしている。きっと、恋愛対象にはなれないんだなって」

「だってソラの部屋には、子どもの頃から何回も入っているし……」

 私の答えは、ソラの地雷を踏み抜いた。