∞8《インフィニティ・エイト》

 中学生になった年の七月。

 私は生理が来ていて、朝から体調が悪かった。

 最悪なことに朝イチの授業は世界史。

 視聴覚室で三十分もあるビデオを見ることになった。

 出席番号順に座ると、私の席はクーラーの真下。

 必死に寒さを耐えていた。
 冷気が肌に突き刺さるようで、腕をさすっても震えが止まらない。

 世界史の丸山(まるやま)先生は太っちょで汗っかきな男性。

 暑いのが嫌いだと言って、クーラーの温度をガンガン下げる。

 設定温度は二十度になっていた。

 そのせいで、真夏なのに視聴覚室は極寒。

 下腹部の痛みは増すばかり。

 内臓を雑巾しぼりみたいにねじられている感覚だ。

 寒いし、おなか痛いし、もうやだ……。

 よりによって世界史。

 丸山先生に保健室行きたいなんて言えるわけないじゃん……。

 丸山先生は、以前も生理痛で辛いからクーラーを止めてくださいと頼んだ女子に「生理は病気じゃない、甘えるな!」と一蹴していた。

 それ以来、女子生徒全員から敵認定されている。

 辛いときにパワハラ暴言をくらうのは嫌だ。

 どうせ我慢しろって言われるだけ……。

 前回、佐伯(さえき)ちゃん泣かされてたな……。

 病気じゃなくてもめちゃくちゃお腹痛いって………。

 もう最後まで我慢するしかない。

 そう考えていたとき、ソラの声がした。

 声変わりが終わったばかりでまだ不安定な声が、はっきりと先生に言う。

「先生。青井さん具合悪そうなので、保健室に連れて行ってもいいですか?」