∞8《インフィニティ・エイト》

 どうなっているの?

 階段を降りると、母さんがクリアファイルを開いてどこかに電話をしているところだった。

 電話を切ってから声をかけてくる。

「おはよう夏美。昨日も話したけれど、母さん今日は市役所や不動産屋さん回って、帰りは夕方になるから。夏美もごはんはコンビニやお祭でてきとうに買って食べて」

「……うん。いってらっしゃい」 

「いってきます。なるべく早く帰るからね」

 母さんは靴をつっかけてでていく。

 家具家電がもうないから、ご飯は買うしかない。

 リビングだった部屋もすっからかん。

 よくソラとリクも遊びに来ていて、一緒に夏休みの宿題をやってた。

 自由研究と称して、ずーっとミーコの観察をしたこともあった。

 ノートがミーコの絵だらけでリクに笑われたっけ。

 ソラはあの頃にはもう星が好きで、天体観測の記録をつけて先生たちを驚かせていた。

 リクはどのコンビニのチキンが一番うまいか、なんて比較をやっていた。

 懐かしいな。

 ここ最近ずっと、楽しかった子どもの頃のことばかり思い出す。

 きっと私はまだ心のどこかで、この街を離れたくないって思っているんだ。

 顔を洗って、頑固なねぐせをクシで整える。

 鏡には昨日(・・)と何も変わらない私の顔が映っている。

 私はアイドル並みの美少女ってわけじゃない。

 特別頭がいいわけでもなく、どこにでもいるような普通の人間。

 それが自己評価。

 ソラとリクは、私のどこに惹かれたのかな。

 考えてもわからなくて、頭を振ってダイニングに戻る。

 昨日と同じなら、あと三十分でソラとリクが来る。

 それよりも早く、ソラに確認したいことがあった。

 ソラは、このループの記憶があるのかどうか。

 もしも記憶があったとしたら、相談に乗ってくれるはず。