∞8《インフィニティ・エイト》

 リクが戻ってきてから、ソラは一切その話題に触れずに、普通の会話を徹底した。

"いつも通りの三人"に戻っただけなのに、もやもやする。

「あとは祭に行こうぜ。射的で夏美の好きなもん取ってやるよ!」

「やめときなよリク。絶対落とせないから」

「うるせー兄貴! やる前から諦めんな! 気合いがあればなんとかなる!」
 
 なんでもう一度八月八日が来たのか、わからない。

「よーし。待ってろよ夏美。俺があのぬいぐるみを取ってやる!」

「お、いいねぇ兄さん。彼女のために当てるか!」

 おじさんがはやし立てるところも同じ。

 何回挑戦してもぬいぐるみに当てることはできず、参加賞の塩アメだけが増える。

 リクが「ぬいぐるみに重石いれてんだろ!」と店のおじさんに的はずれな文句をいうところも同じだった。 

 ──ヒュルルル、ドンッ!

 夜空に大輪の花が咲いた。

 昨日見たのと同じ形、同じ色の花火。

 鮮やかな光が辺りを照らし、祭の喧騒が境内を包む。

 人々の波が、花火会場へと流れていく。

 そんな中、リクが立ち止まった。

「夏美」

 呼びかける声のトーンも昨日と同じ。

「俺、お前のことが好きだ」

 リクは緊張ぎみに声を震わせ、夏美をまっすぐ見る。

 いつものお調子者のリクじゃない、真剣な顔になる。