∞8《インフィニティ・エイト》

 リクも目を丸くしている。

「どうしたんだよ夏美。兄貴の言うとおり具合悪いのか?」

「な、何でもない。……行こう」

 ショルダーバッグを取ってくると、サンダルをつっかけて家を出た。

 耳が痛いくらいのセミの鳴き声。

 肌を刺す日光。

 眩しくて、手をひさしにして遠くを見る。

 むせ返るようなアスファルトの熱気の中を歩く。

 文具屋の前にはいつもどおりミーコがいた。

 毛並みはいつもと同じ。

 そっと手を伸ばしてミーコの頭をゆっくりと撫でる。

「ミーコ。今日もかわいいねぇ。これまでありがとうね。いつかまた会いに来るから、その時まで元気でいてね」

 ウトウトしていたミーコは私の方をちらりと見て、あくびをした。

 商店街の掃除をしていたおばちゃんたちが、私の姿を見つけて手を振る。

「あれ、夏美ちゃんでねーか! じき引っ越しらって?」