∞8《インフィニティ・エイト》

「おそよう!」

 リクが私の頭を指して笑う。

「なんだその寝ぐせ! ボッサボサじゃん」

「もー! うるさいな。いいじゃんちょっとくらい」

 いつもの軽口に言い返して、寝癖を手でおさえた。

 ……?

 なんでだろう。

 昨日も、こんなやり取りをした気がする。

 あれ? 昨日?

 昨日って、八月七日?
 
「髪くらいちゃんと直せよー。今日は最後の思い出作りなんだからさ!」

 変だな。

 昨日も、聞いた気がする。

 でも、引っ越す前日は今日しかないから、昨日聞いたなんてあるわけが……。

「夏美、具合がよくないの? 顔色悪いよ。具合が悪いなら休んでいたほうがいいかもしれない」

 ソラがそっと手を伸ばして、私の前髪を指先でのける。

 触れられた部分が熱い。

 一瞬、夜空の下で私に向き合うソラの姿が見えた気がした。

 胸が熱い。鼓動が早くなる。

 なんで私、こんなに緊張してるの。

「な、んでもない……。学校に行くの?」

「おう。最後なんだし、行こうぜ!」

 リクは満足そうに頷くと、私の腕を取ろうとする。

 反射的に手を引っ込めてしまった。

 何してるの、私。

 リクが私の手を引っ張るのはいつものことなのに。