∞8《インフィニティ・エイト》

 僕たちが高校三年生にあがった四月。

 そのときはまだ、夏美の祖父が健在だった。

 週明けにテストがあるから、僕は夏美と二人で試験範囲の勉強をしていた。

 リクは「休みは休むためにあるんだ。土日に教科書を開きたくない!」と言って走りにいってしまった。

 僕は逆に、休みの日にまで体育の授業みたいなことをしたくない。

 リクはよく部活に入ってまで走ろうと思えるなぁ。

「ソラとリクは双子だけど、似ているのは顔だけよね。正反対なんだもの」なんておばあちゃんには言われる。

 窓から入る穏やかな風が、ノートのページをめくる。

 夏美は僕の向かい側に座って、ニャーちゃんと名付けたネコ型クッションを抱えて勉強している。

 去年雑貨屋に行ったとき、夏美が好きそうだなと思って買ってきたクッションだ。

 部屋に置いておいたらこのとおり、今では夏美専用になっている。

 かわいい系ネコグッズ見ると撫でずにはいられないみたいで、無邪気に抱えている姿がかわいい。

 こんなに気に入ってくれるなら、色違いでもう一つくらい買っておけば良かったかもしれない。
 
 しばらくして、夏美はペンを持ったまま、こくりと首を傾げる。

 そして── そのまま、机に突っ伏した。

 静かな寝息が聞こえてくる。

 僕はじっと夏美の寝顔を見つめた。

 幼さが減り、少しずつ大人の女性に近づいている。

 でも、まだ大人ではない。

 机に伏せたまま静かに呼吸を繰り返す姿は、小さい頃から何も変わらない。