成長してからも、俺たちを完璧に見分けられる他人はほぼいない。
高校に入って一年経ったある日。
もうすぐ午後の授業が始まるときに兄貴の席に腰を下ろしてみた。
完璧に「ソラ」を演じたつもりだ。
襟元のボタンもきっちり留め、背筋を伸ばし、あの優等生らしい雰囲気を真似た。
クラスメートは普通に会話しながら自分の席へ戻っていく。
隣の席の村山が話しかけてくる。
「ソラ、ノート貸してくれよ。現代文って出席番号でかけてくるじゃん。おれ今日絶対あたるからさ」
やっぱり、こいつもその他大勢なんだな。
ふと視線を感じて顔を上げると、夏美が教室の入り口で立ち止まっていた。
夏美は早足でよってきて、じっと俺を見つめる。
「リク。こんないたずらして、先生に怒られても知らないよ?」
クラスのざわめきの中で、夏美の声だけがはっきりと聞こえた。
「……え? ソラじゃないのか?」
村山が、驚いて俺の顔を見た。
一年同じクラスにいたのに気づかねーのかよ、バカめ。
夏美の言葉に、俺は小さく笑う。
「なーんだ、つまんねーの」
「何が?」
「いや、なんでも」
立ち上がり、襟元をゆるめて自分の席に戻る。
それを見て、周りの生徒たちがようやく「え? 本当にリクのほうだったの?」とざわつき始めた。
誰一人気づかなかったのに、夏美だけが即座に見抜いた。
高校に入って一年経ったある日。
もうすぐ午後の授業が始まるときに兄貴の席に腰を下ろしてみた。
完璧に「ソラ」を演じたつもりだ。
襟元のボタンもきっちり留め、背筋を伸ばし、あの優等生らしい雰囲気を真似た。
クラスメートは普通に会話しながら自分の席へ戻っていく。
隣の席の村山が話しかけてくる。
「ソラ、ノート貸してくれよ。現代文って出席番号でかけてくるじゃん。おれ今日絶対あたるからさ」
やっぱり、こいつもその他大勢なんだな。
ふと視線を感じて顔を上げると、夏美が教室の入り口で立ち止まっていた。
夏美は早足でよってきて、じっと俺を見つめる。
「リク。こんないたずらして、先生に怒られても知らないよ?」
クラスのざわめきの中で、夏美の声だけがはっきりと聞こえた。
「……え? ソラじゃないのか?」
村山が、驚いて俺の顔を見た。
一年同じクラスにいたのに気づかねーのかよ、バカめ。
夏美の言葉に、俺は小さく笑う。
「なーんだ、つまんねーの」
「何が?」
「いや、なんでも」
立ち上がり、襟元をゆるめて自分の席に戻る。
それを見て、周りの生徒たちがようやく「え? 本当にリクのほうだったの?」とざわつき始めた。
誰一人気づかなかったのに、夏美だけが即座に見抜いた。



