∞8《インフィニティ・エイト》

 俺と兄貴のソラは一卵性双生児ってやつだ。

 違いを理解できるのは本人である俺たちと、両親くらいだ。

 服は色違いなだけだから、小学校でクラスメートや先生たちから毎回間違えられる。

「先生ー」
「ええと……、ソラくん、かな?」
「いや、リクだけど」
「ご、ごめんね!」

 何年も教師をしている人間ですらこれか。

 まだ小学校に入学してふた月かそこらだ。

 クラスメートもみんな、勝手に間違えて勝手に落胆するのムカつく。

 だから俺も心の中では他人のことを『俺ちを見分けられる人』『その他大勢』に二分している。

 あと、初対面の人間に必ずと言っていいほど聞かれる言葉がある。

「どっちがお兄ちゃん?」

「……俺が弟」

「へぇ~、お兄ちゃんのほうが落ち着いてるんだね!」

 あー、クソめんどくせ。

 この会話何回目だよ。

 お前らは初回だけ聞いてるつもりかもしれねーけど、こっちは何千回と聞かれてんだよ。

 生まれた時間は数時間しか違わないのに、必ず「どっちが兄?」「弟はやんちゃそうだね!」みたいな流れになる。

 どっちが兄か、そんなどうでもいいじゃん。

 聞いて比較して、なんの得があるんだよ?

 昼休み。
 遊びに誘おうと思って、教室にいた夏美を呼んだ。

「夏美」
「なに、リク?」

 夏美は振り向きもせずに答えた。

 ……一瞬、息が詰まる。

 クラスにいた他のやつらも、目を丸くしている。

「俺だってわかったんだ?」

 夏美はきょとんとして、首を傾げた。

「どういうこと?」

 これまで何人もの人に間違われて、うんざりしていた。
 夏美は顔も見ずに、俺がリクだとわかる。

 見分けてほしかったはずなのに、いざこうして簡単に見分けられると戸惑いしかなかった。

「え、だって、どう聞いてもリクの声だったよ」

「いや、俺と兄貴、声がまったく同じだろ。医者にも言われてる。データ上だとまったく同じって」

「うーん……そうかな? 全然違うよ。リクはリク、ソラはソラでしょ?」

 夏美は小首を傾げて、あたりまえのように笑う。

 すごくまぶしかった。