∞8《インフィニティ・エイト》

 ホワイトデーのお返しは、手のひらサイズのかわいいマシュマロギフトだった。

 ソラ先輩にバレンタインチョコを贈った全員が同じマシュマロをもらったらしい。

 つまり、あたしはまだソラ先輩にとって特別でもなんでもないその他大勢。

 手作りでも評価は他の子と何も変わらない。

 他の子に負けないように、もっとアプローチしないと!

 せめてお弁当を一緒に食べてもっとソラ先輩と仲良くなれたらいいな。

 昼休みに二年一組をのぞくと、教室の窓際で男女六人が机をくっつけてお弁当を食べていた。

 そのうち二人はソラ先輩と弟さんだ。

 遠目ではどっちがどっちかわからない。

 二人のうち片方が、隣に座るショートボブの女子の頭を小突いている。

「おい夏美。弁当より先に菓子を食べるな」

「何言ってんのよリク。甘いものはメインディッシュだよ。ネコちゃんのマカロン、かわいいしおいしー! ありがとうソラ」

 夏美と呼ばれた女は幸せそうにネコ型のカラフルなマカロンをほおばっている。

 あれが青井夏美。

 ソラ先輩の横に陣取るおじゃま虫。

「夏美。喜んでくれたのは嬉しいけれど、お弁当入らなくなるよ?」

「入る入る。リクのゼリーも今食べちゃお」

 夏美はマカロンを食べ終えたと思ったらフルーツゼリーも食べている。

 ていうかあの人だけマカロンもらったの?

 もしかして夏美が幼馴染の特権を利用して、図々しくお高いのをリクエストしたとか。

 あり得る。

 ソラ先輩優しいから、そういうの絶対断れないもん。

 他の女子からも「青井ちゃーん、甘いものがメインディッシュって大丈夫?」なんて言われている。

 気心知れた同級生といるときのソラは、部室にいるときのソラ先輩とはぜんぜん違う顔をしていた。

 ソラ先輩、ああいう顔もするんだ。

 知らない先輩だらけのお弁当タイムに入るなんてできるはずもなく、あたしはいったん戦略的撤退した。