∞8《インフィニティ・エイト》

 私がつわりで起き上がれなかったときは私の分の家事をこなし、ミラが夜泣きしたときも率先してあやす。

 仕事の休みはすべて家族の時間につぎ込むし、入籍から十年経っても毎日「夏美大好き」と言う。

 家族に全力の愛を注いでくれる。

 旦那様が毎日私と娘を溺愛してくる。

 ソラはリクのことを親バカ親バカ言うけれど、ソラもまったく負けていない。

「物心つく前から一緒にいたのに、まだ二人の時間が足りないなんて欲ばりなパパですねー」

「あいにく、僕は彦星みたいに年一の逢瀬で我慢するような出来た人間じゃないよ。今はミラが寝てるから、パパじゃなくてソラの時間」

 仕事のときのキリッとした姿はどこへやら。

 ソラは子どもみたいに無邪気な顔で笑う。

「さすが私たちの写真をスマホの待ち受けにしている人。一味違う」

「仕事中は会えないじゃないか。だから研究室の机にも写真を置いているよ。でもやっぱり写真じゃなくて本物がいいな。夏美」

 二人のときはミラよりも甘えん坊だ。

 平気でこんなことを言ってのける。

 好きな人にこんなにも愛されて、嬉しくないわけがない。

 ソラが愛を口にするたびに、私の胸はあたたかい気持ちで満たされる。

「私もだよ、ソラ。大好き」

 ループを繰り返していたあのときは、こんなふうに未来が続いていくなんて、思いもしなかった。

 自分の鼓動が大きく聞こえる。

 ソラに手を伸ばして、胸に頬を寄せる。

 ソラも私を抱きしめて、無邪気に笑う。

 私もソラも、たしかに生きてここにいる。

 ループを抜けた先で、私たちの時間は進んでいく。
 ずっとずっと。



 END