∞8《インフィニティ・エイト》

「僕、大人になったらここで働きたい!」

 そう言っていた少年は、今、約束を果たして先生と呼ばれている。

 年配の先生日高(ひだか)がソラの肩を叩いた。

「青井君、子どもたちに人気だね」

「ありがとうございます。でも、駆け出しなのでまだまだ日高先生には敵いません」

 謙遜しながらも、ソラは嬉しそうに微笑む。

 日高は夜空を見上げ、ふと呟いた。

「君も、子どもの頃にこのまつりに来ていただろう? そのとき、"大人になったらここで働きたい"って言ったのを今でも覚えているよ」

 ソラは驚いて、日高を見る。

 星まつりで日高にその話をしたのは、ソラがまだ六歳の頃だ。

「……もしかして、覚えていたんですか? 二十年は前のことなのに」

「当たり前だろう。そう言ってくれる子は何人もいるが、本当にずっと星を追い続けてここに戻ってきてくれる子はひと握りだ。天文教室をしていて、これ以上嬉しいことはないよ。ああ、年を取ると涙もろくなっていかんな」

 日高はメガネをおしあげて、ハンカチで涙を拭う。

「僕も、今の子たちに夢をつなげているといいです」

「それは良いな。あの子達の誰かが戻ってきてくれるか見届けるためにも、わたしはあと二十年は健康に生きないといけないなぁ。ハッハッハ」

 御年六十でこんなに元気なお方だ。

 二十年後でも、新しい先生の誕生を見守っていそうだ。