∞8《インフィニティ・エイト》

 四階建ての古めのマンションは、学生やふたり暮らし向けの物件で、都心から離れているからそこに比べると家賃が安い。

 地域密着型の小さなスーパーが近くにあって買い物に困らない。

 それでいて通学に使う駅が徒歩圏内という、理想的な住まいだ。

 初めての二人暮らしに、胸が踊っている。

 ソラのスマホが震えた。

 ソラは画面を見て苦笑する。

「誰から?」

「リクからだよ。専門学校で彼女見つけて夏休み実家に帰るときに紹介してやる! だって」

 リクは、スポーツトレーナーの専門学校に進学した。

 将来の夢はジムのパーソナルトレーナーになることだと胸を張っている。

 長年陸上部にいて根性があるから、リクなら大丈夫。

 階段を登りながら、不意にソラがポケットから何かを取り出した。

「夏美。合鍵、渡しておくね。夏美もこれから住むんだから、持ってて」

 手のひらに乗せられたのは、銀色のディンプルキーだ。