∞8《インフィニティ・エイト》

 バレンタイン当日の学校が終わる時間、リクから電話がかかってきた。

『おい夏美、面白い話を二つ聞かせてやろう』

「あいさつも抜きにいきなりなに?」

『夏美がいなくなってチャンス到来だと思ったのか、例年以上に女子どもが群がってきたんだよ。だけど、兄貴のやつ「夏美に誤解させたくないからゴメンネ」ってぜーんぶ突っ返してた。いやー、あんな風にチョコを全拒否する兄貴、俺高三まで生きてきて初めて見た』

 ソラの声音を真似しながら笑いまくるリク。

 ……元クラスメートのみんなどころか他の学年の子たちにも付き合っていることが伝わったって解釈でオーケー?

『卒業後の同窓会がまじで楽しみだなー。「ぜってー引っ越す直前の夏休み中になにかあったんだろ!」って質問攻めになるの確実だぞお前ら。級長が事実確認のために夏美も呼ぶってメッチャ張り切ってた。ククク』

 みんなに会いたいけど、根掘り葉掘り聞かれるのは恥ずかしすぎる。

「笑いごとじゃないよ、なんで止めてくれないのリク!  まったくもう。……それで、面白い話のもう一つはなんなの?」

『それはだな、さかのぼること十年と少し前……って、あ なにしやがる兄貴!』

 リクの電話を奪い取るようなもみあう音が聞こえて、ソラが出た。

『リク、余計なことを言わないでくれ。……夏美、紅茶ありがとう。この茶葉初めて飲んだけど、美味しいね』

「口にあって良かった。叔母さんがこのあたりで一番人気のお茶屋さんなんだって教えてくれてね。ソラが好きそうって思ったの」

『うん。ちなみにこんなこと言ってるけど、リクも荷物が届いてすぐお湯を沸かし始めたから素直じゃないよね』

『うるへー』

「ふふふっ。相変わらずだねぇ。ソラもリクも、風邪ひかないように気をつけてね。おじさんたちも元気でね」

『うん、伝えておくよ。また電話するから』

 電話を切ったあとも、まだドキドキしている。