∞8《インフィニティ・エイト》

「あー! ソラ先輩だ! ここで会えて嬉しいです!」

 天文部の芽衣さんだ。

 朝顔柄の浴衣を着こなしていて、ヘアセットも可愛らしい。

 浴衣に合わせた色のネイルもしている。

 芽衣さんはちらりと意味有りげに私を見てから、ソラに聞く。

「ソラ先輩は、青井先輩と付き合っているんですか?」

 二人で祭に来てはいるけれど、今の私とソラの関係を表す言葉があるなら幼なじみ以外にない。

「…………付き合ってはいないけれど」

 ソラは眉をひそめて、どこか冷たい声で答える。

「なら……あたしと、付き合ってくれませんか? ソラ先輩のこと、好きなんです!」

 ソラが告白された。

 それも、私の目の前で。

「青井先輩は明日遠くに引っ越すんでしょう? ただのお友達なんでしょう? 邪魔ものはどこかに行ってください。雰囲気台無しなんで」

 芽衣さんは私を睨みながら牽制してくる。

 私はソラと芽衣さんの恋路の邪魔者?

 私はソラの告白に答えられていない。

 ソラが恋を見つけても止める権利はない。

 ただの幼馴染だから。

 黙ったままのソラに、芽衣さんはなおも続ける。


「お試しであたしと付き合ってください! あたしのほうが絶対この人よりかわいいし、彼女にしたら自慢できます」

 芽衣さんは声を大にして、一歩踏み出す。

「今はただの後輩としか思えなかったとしても、付き合ううちに好きになるってあるでしょう? あたし、ソラ先輩のこと一目惚れで、この二年ずっとソラ先輩のこと見てました。ソラ先輩のおかげで、星も、部活も好きになれたんです。部活で一緒にいるうちに、ソラ先輩の優しいとこ、誠実なとこ、いろんな先輩を見てもっと惹かれたんです。本当に、好きなんです!」 

 芽衣さんがありったけの想いをソラに告げる。

 何周ループしてもこの子が私によそよそしかった理由。

 芽衣さんはソラの近くにいる私のことが、嫌いだったんだ。

 私は知らないところでずっと、芽衣さんにライバル視されていた。

 境内に太鼓の音が響く。

 花火が夜空に上がった。

 なのに、私の耳には何も入ってこなかった。

 心臓が激しく鳴っている。

 息苦しい。

 もしソラが、芽依さんの手を取ったら。

 だめ。そんなの、絶対にだめ。

 ソラの隣は、私の……。