∞8《インフィニティ・エイト》

 夏美に選ばれたい、唯一でありたい。

 拒絶されたくない、他の誰にも触らせたくない。

 夏美が他の誰かの手を取るなら、邪魔したい。

 こんな醜い気持ち、夏美に知られたくない。

 でも、夏美に知ってほしい。

 僕だけを見てほしい。

 僕は一つ知っている。
 好きでもない人間から向けられる気持ちは迷惑でしかないことを。

 天文部の後輩、篠原さんがあからさまに好意を向けてくるのを、うっとうしいとしか思えなかった。

 他の部員が「可愛い後輩に慕われて、幸せ者だな星野」なんて冗談まじりに言うが、本当に心底うんざりしていた。

 猫なで声ですり寄られるのを気持ち悪いと思う。

 自分は可愛くて人から好かれて当然、と思っているような言動が見え隠れしているのがどうしても合わない。

 はっきり告白してきたなら無理だと断れるのに。

 何も言われていないのに、こっちから「僕のこと好きでしょ? 僕は君の気持ちに答えられないよ」なんてすごく痛い奴になるじゃないか。
 
 僕が篠原さんを苦手に思うのと同じように、自分が夏美から、苦手だ、嫌いだと思われてたらと思うと怖い。

 僕はみんなが思うような優等生じゃないし、すごく自分勝手だ。