∞8《インフィニティ・エイト》

 夏美と約束した、夏祭の時間が近づいている。

 家の中は静かで、風に乗って遠くから祭の太鼓の音が聞こえていた。

 僕はショルダーバッグを提げて窓際に立ち、外を見つめていた。

 リクは昼過ぎに帰宅してソファに座り、腕を組んで考え込んでいる。

 特別仲が悪いわけではないけれど、僕たちは普段から間に夏美がいないと会話らしい会話もない。

 それを踏まえても、いま僕たちの間にはなんとも言えない緊張感が漂っている。

「リク、そろそろ約束の時間だよ。準備して。夏美を迎えに行かなきゃ」

 声をかけるとリクは深く息を吸い、静かに口を開いた。

「……俺は行かねぇよ」

「……何で?」

「何でも何もない。祭は兄貴と夏美、二人で行け」

 リクは本当に行くつもりがないのか、着替えも財布の用意もしていなかった。

 こんなこと、これまでなかったのに。

「これまで祭は三人で行っていただろ。なのに、なんでそんなことを言い出すんだ?」

「夏美が誘ったのは兄貴だけだからだよ」

 リクは立ち上がり、ソラを睨みつけた。

「俺はもう夏美に振られてる。だから、次は兄貴が覚悟を決める番だ」

「……え?」

 振られる? リクが?
 予想外のことを言われて硬直した。