∞8《インフィニティ・エイト》

 8月8日 8:30

 ついに、八回目のループが始まった。

 もう見慣れてしまった画面。

 リクから短いメッセージが届いた。

『兄貴はループを覚えてない。夏美から、兄貴を祭に誘え。このメッセージは読んだらすぐ消せ。兄貴に見られたら変な勘違いされる』

 今回も、ループの記憶を持っているのは私とリクだけなんだ。

 私は指示通りにメッセージ履歴を消して、起き上がる。

 どうしたらループが終わるのかはわからないけれど、もう後悔はしたくない。

 明日の私が今日の気持ちを覚えている保証なんて、どこにもないんだから。

 今度こそちゃんとソラと話そう。

 顔を洗って髪を整えて、両手で頬を叩いて気合を入れる。

 星野家のチャイムを押す。

 幼い頃から数え切れないくらいここに来たのに、今日は緊張で指先が震える。

 玄関を開けたのはおばさんだった。

「あら、夏美ちゃんじゃない。いらっしゃい!」

「おはようございます、おばさん。二人はどうしてます?」

「ソラは部屋で勉強中。リクはランニングするってさっき出ていったわ。陸上部を引退しても走るなんて、あの子はよほど走るのが好きなのねぇ」

 ソラが変に勘違いしないよう、リクが気を利かせてくれたんだ。

「暑いでしょ? お茶入れるから、ソラの部屋に行ってて」

「ありがとうございます。おじゃまします」

 おばさんの優しい笑顔に見送られて、私は階段を上がる。

 ゆっくりとソラの部屋のドアをノックした。