翌日。
街の中心部まで歩いて行けば、待ち合わせ場所には既に待っているそーちゃんがいた。当然私服である。スカジャンにジーンズでイケイケ男子なはずなのに、顔がどうしても可愛い。
そして大学生らしい男2人に絡まれている。学校にいる時に発言していたように「ゴルァ!」と叫べばいいのに。結局は見た目だけがヤンキーなそーちゃんは肩にかけたショルダーバッグの紐を両手でキュッと握りしめながら……「友達待ってるので」と俯いている。
「じゃあ友達含めて遊ぼうよ。奢るからさ」
「いえ。あの……大事な用事なので」
僕はただ時間があったから付き合っただけだが。そーちゃんにとってはモデルになる僕をカッコよく仕上げるための下準備の時間なのだ。気軽な格好で来てしまったのを少し後悔しながら……「お待たせ」と男2人を押し退けて肩を組む。
「っ! テルくん」
「行こ」
「あ、キミ! オレらと遊ば――」
「あ?」
睨みつけると、男2人は「すいませんでしたぁ!」と走り去ってしまった。彼らよりも身長高いことが役に立ったか。
「……テルくん。ありがとう」
「遅くなってごめん。変な奴らに絡まれちゃったね」
「ううん。待ち合わせ5分前だったし、ボクが早く着いちゃっただけだし……というか、テルくん」
「うん?」
「……サングラス、似合うね」
肩を組んで歩いていると、そーちゃんがまじまじと僕の顔を見ていることに気づき少し頬が熱くなる。
僕の私服は、少し大きめのパーカーとジーンズというシンプルなもの。それから、日差しが気になったからサングラス。いつもかけている眼鏡は今日はコンタクトだ。
「サングラスがいい脅しになったかも」
「背も高いし、サングラス似合うし、テルくんはほんとに良いモデルだよ!」
目をきらきらさせてそーちゃんは言う。
「……ありがと」
ずっと僕を持ち上げてくれるそーちゃんは嫌じゃない。小っ恥ずかしくなり、サングラスを外してそーちゃんの目元にかける。
「サングラスかけた方がナンパされ難いかも」
「……くれるの?」
「迷惑そうにしてるそーちゃん、もう見たくないからさ」
「……へへ。ありがと」
嬉しそうに、笑って俯いた。
可愛い。言ったら拗ねるから言わないけど。
多分そーちゃんは、黒髪のままだったら今よりもっと変な人たちに絡まれて大変だったのだろうと悟った。だから髪も染めて、ピアスをして。それでも絡まれる。
(僕ってもしかして用心棒っぽい?)
それでも、そーちゃんが変な心配せずに心から楽しめる時間が増えるなら良いかと思ったりした。
服を選ぶのもそこそこに、あとは普通にゲーセン寄ったり、カフェに寄って休憩したり。衣装は揃ったのだからもう解散でも良かったのに離れがたかった。
僕たちは今まで出会っていなかった期間を埋めるように色んな会話をしていく。随分と相性は良いようだった。
きっとそーちゃんがとても人懐っこいから。
その中でも印象深い話が「電車に乗ってる時、痴漢から助けてくれたのはもしかしたらテルくんだったかも」である。
「多分違うよ。僕、電車ほとんど乗らないし」
「最近写真を見返していて思うんだ……あの時助けてくれた王子さまは、今目の前に現れてくれたって……」
随分と、メルヘンな話だ。
「……覚えてないなあ。ごめん」
「ううん。ボクも変な話振ってごめん。面影が似てたからさ」
ニコッと笑ってくれたけど、少し残念そうだった。注文したアイスココアを飲みながら、必死に過去を回想する。
しかし記憶にはなかった。
「……無意識に助けちゃってた感じかな」
「ううん。しっかり目合った。ボクを守るように肩を抱いて痴漢から引き離してくれた。さっき、ナンパから助けてくれたように」
「……違う人かも」
「そっか〜。あれ〜? 絶対テルくんだと思ったのにな〜」
首を何回も傾げながら、抹茶ラテを飲むそーちゃん。大変な過去がたくさんあるんだな。
「王子さまだと思ったから、僕をモデルにしたの? 再会出来たと思ったから?」
仲良くなろうと思ったのも僕が王子さまだったから?
……え? 僕は知らない誰かに少し妬いている?
「違うよ、階段から落ちそうになったボクを助けてくれたテルくんに……一目惚れしたんだよ。綺麗な顔だなあって。それから、会話をしていくうちに王子さまの存在を思い出して」
「……ふぅん」
王子さま、ね。
僕は今まで痴漢に遭ったり変な人に絡まれることもなかったから、比較的平和な人生なのだろう。
文化祭は2週間後。
その前に、僕たちは写真を撮らなければならない。
王子さまの話は一旦置き「何日の放課後に」「どこの教室で」「何分間粘るか」を詳細に話し合って決めていく。あとは教室を使う予約をそーちゃんがしてくれるそうだ。
「スケジュールしっかり立てるんだ。本格的。僕もなんかしっかりしなきゃって思ってきたかも」
「テルくんは気楽に、ただ来てくれるだけでいいから! お金も発生しないのに、ボクのモデルになってくれてありがとう!」
両手を握られて、ブンブン激しく振られる。
プロの写真家とモデルだったら、どちらかが依頼してお金が発生するのだろう。何もないのは、僕たちが未成年だから。それでも、僕には得るものがある。
(そーちゃんとの時間が楽しいから、お金よりも質はいいのかも)
なんて、恥ずかしくて僕は言えないけれど。
カフェを出た後、手を振ってその場で別れる。
「また遊べたらいいな……」
そう願いながら。
街の中心部まで歩いて行けば、待ち合わせ場所には既に待っているそーちゃんがいた。当然私服である。スカジャンにジーンズでイケイケ男子なはずなのに、顔がどうしても可愛い。
そして大学生らしい男2人に絡まれている。学校にいる時に発言していたように「ゴルァ!」と叫べばいいのに。結局は見た目だけがヤンキーなそーちゃんは肩にかけたショルダーバッグの紐を両手でキュッと握りしめながら……「友達待ってるので」と俯いている。
「じゃあ友達含めて遊ぼうよ。奢るからさ」
「いえ。あの……大事な用事なので」
僕はただ時間があったから付き合っただけだが。そーちゃんにとってはモデルになる僕をカッコよく仕上げるための下準備の時間なのだ。気軽な格好で来てしまったのを少し後悔しながら……「お待たせ」と男2人を押し退けて肩を組む。
「っ! テルくん」
「行こ」
「あ、キミ! オレらと遊ば――」
「あ?」
睨みつけると、男2人は「すいませんでしたぁ!」と走り去ってしまった。彼らよりも身長高いことが役に立ったか。
「……テルくん。ありがとう」
「遅くなってごめん。変な奴らに絡まれちゃったね」
「ううん。待ち合わせ5分前だったし、ボクが早く着いちゃっただけだし……というか、テルくん」
「うん?」
「……サングラス、似合うね」
肩を組んで歩いていると、そーちゃんがまじまじと僕の顔を見ていることに気づき少し頬が熱くなる。
僕の私服は、少し大きめのパーカーとジーンズというシンプルなもの。それから、日差しが気になったからサングラス。いつもかけている眼鏡は今日はコンタクトだ。
「サングラスがいい脅しになったかも」
「背も高いし、サングラス似合うし、テルくんはほんとに良いモデルだよ!」
目をきらきらさせてそーちゃんは言う。
「……ありがと」
ずっと僕を持ち上げてくれるそーちゃんは嫌じゃない。小っ恥ずかしくなり、サングラスを外してそーちゃんの目元にかける。
「サングラスかけた方がナンパされ難いかも」
「……くれるの?」
「迷惑そうにしてるそーちゃん、もう見たくないからさ」
「……へへ。ありがと」
嬉しそうに、笑って俯いた。
可愛い。言ったら拗ねるから言わないけど。
多分そーちゃんは、黒髪のままだったら今よりもっと変な人たちに絡まれて大変だったのだろうと悟った。だから髪も染めて、ピアスをして。それでも絡まれる。
(僕ってもしかして用心棒っぽい?)
それでも、そーちゃんが変な心配せずに心から楽しめる時間が増えるなら良いかと思ったりした。
服を選ぶのもそこそこに、あとは普通にゲーセン寄ったり、カフェに寄って休憩したり。衣装は揃ったのだからもう解散でも良かったのに離れがたかった。
僕たちは今まで出会っていなかった期間を埋めるように色んな会話をしていく。随分と相性は良いようだった。
きっとそーちゃんがとても人懐っこいから。
その中でも印象深い話が「電車に乗ってる時、痴漢から助けてくれたのはもしかしたらテルくんだったかも」である。
「多分違うよ。僕、電車ほとんど乗らないし」
「最近写真を見返していて思うんだ……あの時助けてくれた王子さまは、今目の前に現れてくれたって……」
随分と、メルヘンな話だ。
「……覚えてないなあ。ごめん」
「ううん。ボクも変な話振ってごめん。面影が似てたからさ」
ニコッと笑ってくれたけど、少し残念そうだった。注文したアイスココアを飲みながら、必死に過去を回想する。
しかし記憶にはなかった。
「……無意識に助けちゃってた感じかな」
「ううん。しっかり目合った。ボクを守るように肩を抱いて痴漢から引き離してくれた。さっき、ナンパから助けてくれたように」
「……違う人かも」
「そっか〜。あれ〜? 絶対テルくんだと思ったのにな〜」
首を何回も傾げながら、抹茶ラテを飲むそーちゃん。大変な過去がたくさんあるんだな。
「王子さまだと思ったから、僕をモデルにしたの? 再会出来たと思ったから?」
仲良くなろうと思ったのも僕が王子さまだったから?
……え? 僕は知らない誰かに少し妬いている?
「違うよ、階段から落ちそうになったボクを助けてくれたテルくんに……一目惚れしたんだよ。綺麗な顔だなあって。それから、会話をしていくうちに王子さまの存在を思い出して」
「……ふぅん」
王子さま、ね。
僕は今まで痴漢に遭ったり変な人に絡まれることもなかったから、比較的平和な人生なのだろう。
文化祭は2週間後。
その前に、僕たちは写真を撮らなければならない。
王子さまの話は一旦置き「何日の放課後に」「どこの教室で」「何分間粘るか」を詳細に話し合って決めていく。あとは教室を使う予約をそーちゃんがしてくれるそうだ。
「スケジュールしっかり立てるんだ。本格的。僕もなんかしっかりしなきゃって思ってきたかも」
「テルくんは気楽に、ただ来てくれるだけでいいから! お金も発生しないのに、ボクのモデルになってくれてありがとう!」
両手を握られて、ブンブン激しく振られる。
プロの写真家とモデルだったら、どちらかが依頼してお金が発生するのだろう。何もないのは、僕たちが未成年だから。それでも、僕には得るものがある。
(そーちゃんとの時間が楽しいから、お金よりも質はいいのかも)
なんて、恥ずかしくて僕は言えないけれど。
カフェを出た後、手を振ってその場で別れる。
「また遊べたらいいな……」
そう願いながら。



