翌日の土曜日。私は優一と食べ歩きをした。
優一は好き嫌いが少しあるらしい。だけど、私の身体に入って味覚に変化があったようだ。
もうすぐ夕方。私は公園のベンチに座っている。ベルトをゆるめたけど、まだお腹がちょっときつい。
「はあ……あれもこれも、うまい! 俺、すみれといっしょなら食い道楽になりそう! いけないよな。すみれを太らせてしまう」
「心配しなくていいよ。私、もう体型なんか気にしないの。優一。次は何、食べたい?」
「うーん、コーンバターラーメンに、チキンサンド、抹茶あんみつときたから……お、あれ!」
優一が目を向ける方を、よく見た。ピンクとライトブルーのキッチンカーだ。近くには、のぼりがある。
『アメリカで大人気のメガ盛り生クリームクレープ、日本上陸!』と書いてあった。
「懐かしいな。なあ、すみれ。あれ食べてもいいか?」
「おいしそうだね、行こう!」
私は、キッチンカーの前の行列に並んだ。
「おいしそう」と思ったけど、前の人たちが受け取っているクレープを見て、私は声が出そうになった。
こ、これは……!?
私の番がきた。お金を払い、クレープをもらう。
メガ盛り生クリームクレープ……その名の通り、生クリームがいっぱい。お姫様のドレスのフリルみたいに、もこもこと波打つ形の生クリーム……。
甘いものは大好きだけど、お腹ぱんぱんの私が食べても大丈夫かな……。
ベンチに座り、私はメガ盛り生クリームクレープを見つめた。
よだれが出てくる……でも、このよだれは……私のじゃない!
「うまそう!」
「そ、そうだね……」
甘さの極み、甘さの暴力だよ……こんな山盛りの生クリーム……。
でも、メガ盛り生クリームクレープは優一の大好物なんだ!
私は優一と毎日、楽しく過ごすと決めたんだ!
私は、メガ盛り生クリームクレープに齧りついた。
ひとくち食べただけで、わかる……この濃厚なクリームは、あとで胃もたれする……。
「これだよ、これ! このこってりとした、しつこい生クリーム!」
優一は喜んでいる。いままでの食事のなかで、いちばん嬉しそう。
「あはは、よかったね……」
手を止めるとまた、よだれが出てきた。
そんなに好きなの!? こんなに濃い生クリームが!?
「すみれ。手に生クリームがついているぞ」
私は、生クリームがついた指を舐めた。
「はあ……指をしゃぶりながら、生クリームてんこ盛りのクレープを食べる……本当に俺は、生き返ったんだなあ!」
「……兄さん? いまの声、兄さんだよな!?」
声がしたので、私は顔を上げた。目の前にいたのは……。
「早川くん!」
クラスメイトの早川海斗くんだった。
早川くんも、クレープを手にしていた。メガネの位置を何度も指で直して、私を見つめている。
「なんで……なんで、西島さんが兄さんの声でしゃべれんだよ!?」
「よ、海斗」
「もしかして西島さんじゃなくて、西島さんの格好をした兄さんなの?」
「惜しい! 俺は、すみれの身体を乗っ取ったんだよ」
「ってことは、地縛霊ー!? 成仏していなかったのかあぁぁ!?」
早川くんの声がこだまする。
キッチンカーに並ぶ若者たち、公園で遊ぶ家族、みんながこっちを見た。
びっくりしたのか、カラスが鳴き声を上げて、一斉に飛び立った。
こぶしを強く握ったのか、早川くんのクレープから生クリームが飛び出している。その生クリームを拭おうともせず、早川くんの身体は震えていた。
優一は好き嫌いが少しあるらしい。だけど、私の身体に入って味覚に変化があったようだ。
もうすぐ夕方。私は公園のベンチに座っている。ベルトをゆるめたけど、まだお腹がちょっときつい。
「はあ……あれもこれも、うまい! 俺、すみれといっしょなら食い道楽になりそう! いけないよな。すみれを太らせてしまう」
「心配しなくていいよ。私、もう体型なんか気にしないの。優一。次は何、食べたい?」
「うーん、コーンバターラーメンに、チキンサンド、抹茶あんみつときたから……お、あれ!」
優一が目を向ける方を、よく見た。ピンクとライトブルーのキッチンカーだ。近くには、のぼりがある。
『アメリカで大人気のメガ盛り生クリームクレープ、日本上陸!』と書いてあった。
「懐かしいな。なあ、すみれ。あれ食べてもいいか?」
「おいしそうだね、行こう!」
私は、キッチンカーの前の行列に並んだ。
「おいしそう」と思ったけど、前の人たちが受け取っているクレープを見て、私は声が出そうになった。
こ、これは……!?
私の番がきた。お金を払い、クレープをもらう。
メガ盛り生クリームクレープ……その名の通り、生クリームがいっぱい。お姫様のドレスのフリルみたいに、もこもこと波打つ形の生クリーム……。
甘いものは大好きだけど、お腹ぱんぱんの私が食べても大丈夫かな……。
ベンチに座り、私はメガ盛り生クリームクレープを見つめた。
よだれが出てくる……でも、このよだれは……私のじゃない!
「うまそう!」
「そ、そうだね……」
甘さの極み、甘さの暴力だよ……こんな山盛りの生クリーム……。
でも、メガ盛り生クリームクレープは優一の大好物なんだ!
私は優一と毎日、楽しく過ごすと決めたんだ!
私は、メガ盛り生クリームクレープに齧りついた。
ひとくち食べただけで、わかる……この濃厚なクリームは、あとで胃もたれする……。
「これだよ、これ! このこってりとした、しつこい生クリーム!」
優一は喜んでいる。いままでの食事のなかで、いちばん嬉しそう。
「あはは、よかったね……」
手を止めるとまた、よだれが出てきた。
そんなに好きなの!? こんなに濃い生クリームが!?
「すみれ。手に生クリームがついているぞ」
私は、生クリームがついた指を舐めた。
「はあ……指をしゃぶりながら、生クリームてんこ盛りのクレープを食べる……本当に俺は、生き返ったんだなあ!」
「……兄さん? いまの声、兄さんだよな!?」
声がしたので、私は顔を上げた。目の前にいたのは……。
「早川くん!」
クラスメイトの早川海斗くんだった。
早川くんも、クレープを手にしていた。メガネの位置を何度も指で直して、私を見つめている。
「なんで……なんで、西島さんが兄さんの声でしゃべれんだよ!?」
「よ、海斗」
「もしかして西島さんじゃなくて、西島さんの格好をした兄さんなの?」
「惜しい! 俺は、すみれの身体を乗っ取ったんだよ」
「ってことは、地縛霊ー!? 成仏していなかったのかあぁぁ!?」
早川くんの声がこだまする。
キッチンカーに並ぶ若者たち、公園で遊ぶ家族、みんながこっちを見た。
びっくりしたのか、カラスが鳴き声を上げて、一斉に飛び立った。
こぶしを強く握ったのか、早川くんのクレープから生クリームが飛び出している。その生クリームを拭おうともせず、早川くんの身体は震えていた。



