十人一色 ─トランスジェンダーをかかえたふたり─

「ごめんな。結婚式に招待するって言ったのに。婚約、解消になった」

 和香はどう返せばいいのかわからず、ただ頷く。

「うちの親や水沢が普通に接してくれるからさ、忘れてたよ。アレが世間一般の評価なんだって」

 リクはカラオケルームの長椅子に寝転がる。顔に腕を押し当てて、悔しそうに呟く。

「オレは生まれながらの男じゃないからさ、あいつの両親はそれが許せないって、孫も望めないし、普通の男と結婚するなら許せたけど、性転換したやつなんて言語道断だって……」

 いつも自信満々で楽しげに笑っていたリクは、憔悴しきっている。和香以外の誰を相手に、この悔しさを吐き出せるだろう。

「好きで女に生まれたわけじゃないのに」
「……そうだよな。女に生まれたくて生まれたわけじゃないのに」

 この発言は自分を産んだ母親を傷つける。それをわかっていても言わずにはいられない。
 和香もリクも、はじめから男として生まれてきたなら苦しまなかった。

 結婚を認めなかったシオリの親を責めたってなにも解決しない。