十人一色 ─トランスジェンダーをかかえたふたり─

「さ、せっかくフリータイムなんだから存分に歌おうぜリク。入れたい曲リストアップしてきたんだから」

「へへへ。オレもリスト作ってたんだ」

 お互いが知っている曲ならパート分けして歌い、時間が許すかぎり歌って笑った。

「次に会うときは、男のリクだな」

「おう! 男になったら、またここでカラオケしようぜ!」

 次の約束をして、リクは帰っていった。

 夕方、リクと別れたその足で近場の神社に向かった。

 神さまなんて信じちゃいないけど、リクが手術を受けるとき、うまく行くようにお祈りしておく。

 小銭を投げて二礼一拍。 

 和香は勇気がなかったから、誰にも言えなかった。

 和香の両親は普通じゃない人間を受け入れてくれるような……あたたかい人間じゃない。

 和香はこれから先も、親が決めた色で生きるしかない。

 だからせめて、リクだけは。

 何よりも大事な親友が、これから先、好きな道を歩めますように。

 男として、生きていけますように。

 生まれて初めて、心から神様に祈った。