十人一色 ─トランスジェンダーをかかえたふたり─

 カラオケの画面では新曲と店のCMが無限ループしている。

 リクは和香の向かいに座り、選曲の機械にも手を伸ばさず、うつむきがちに口を開いた。

「……水沢はFtM(エフティーエム)って知ってるか?」

「初めて聞く単語だな。そのFtMって今日の要件に関わること?」

 和香の問いかけに静かに頷いて、ジンジャーエールを一口飲む。

 それから絞り出すように言った。

「FtMっていうのは、性同一性障害。体は女で心が男の人間を指す言葉。…………オレ、ずっと自分が男だと思って生きてきたんだ」

 和香は納得した。
 やっぱりリクは、自分と同じだった。

「驚かないんだな」

「ずっと、そうじゃないかって思ってた。俺と同じなんじゃないかって」

 FtMという分類名があることを知らなかっただけだ。

 和香は、自分の心が男だと言うことはずっとわかっていた。

 リクは長くため息をつくと、いつものような笑顔を浮かべる。

「……オレもずっとそうじゃないかと思ってた。だからこそ、こうして水沢に打ち明けた」