十人一色 ─トランスジェンダーをかかえたふたり─

 和香は親の反対を押し切って家を出た。

 生活用品を入れた最後のダンボールを閉めていると、リクから電話が来た。

『久しぶり。水沢、今いいか?』

「大丈夫だよ」

 和香が答えると、リクは少し間をおいて切り出した。

『どうしても話しておきたいことがあるんだ。一度二人だけで会えないか?』

 とても言いにくそうにしている。
 茶化せるたぐいの話じゃないのを感じ取って、和香も真剣に答える。

「いいよ。お互いの空いてる日すり合わせようか」

『ありがとな』

 会う日を決め、電話を切ってから荷造りを再開する。

 リクのあの声音は、以前聞いた気がする。
 彼氏がいるといった日、別れてると聞いた日。

 恋愛に関する話じゃないだろう。

 今の電話は、恋人ができた報告にしてはやけに重たい空気だった。

 そして約束の日。

 待ち合わせの時間より二十分早くリクが来た。

「早かったな、リク」

「そっちこそ。バタバタしている時期に呼び出して悪かったな」

「構わんよ」

 その足で待ち合わせ場所の近くにある、持ち込みOKのカラオケボックスに行った。