十人一色 ─トランスジェンダーをかかえたふたり─

 中間テストの勉強のため、放課後いつものメンバーで図書室に集う。

 希沙が数学のノートにぐるぐるとシャーペンを走らせる。

 何を書くでもなく動かすだけだからノートが黒く潰れていく。

「あーうー、寂しいなぁ。もうすぐ卒業かー」

「まだ三年前期の中間だろ」

「もう三年の中間なんだよ〜。ちょっと前までミズっちが暴れん坊将軍の着メロ鳴らしたと思ってたら、あっという間に三年生じゃない」 

「忘れろ。それは黒歴史だ」

 一年春の失態だ。

 今でもことあるごとにネタにされる。

 和香は英語のテスト範囲にマーカーを入れていく。

 同じクラスの雪絵(ゆきえ)は、世界史の教科書とにらめっこ中。

「早かったよねほんと。もう受験のこと考えなきゃだもん。わたしはM町の調理師学校行きたいのに、親は市内の調理師学校に行かないなら学費を出してやらんって言うんだよ。ひどくない? M町の学校のほうが学費安いのに、家から通えない距離だとひとり暮らししなきゃだから許さん! だってさ。わたしはかごの鳥かってのよ」