僕は無言で絶縁状に署名して、親指を朱肉に押し当てた。
指先が震えて、文字がうまく書けなかった。
父さんと母さんは腕組みしたまま僕を見ていて、何も言わなかった。
リュックの中に入っているのは、少しの着替えと通帳だけ。
通帳には、十万円入っていた。
「それは手切れ金よ。二度と、この家に戻ってこないで。今日のうちに鍵も変えるから、あなたの持っている鍵は使えなくなるからね」
僕は振り返らなかった。
言い返しもしなかった。
リュックを背負って、玄関を出る。
こんなに簡単に捨てられるくらいに、父さんと母さんにとって、僕は要らない子だったんだ。
十八年振り返っても、父さんと母さんに愛されていると感じたことなんてなかった。
いつもいつも、成績成績成績。
見えないオリに閉じ込められている気分だった。
土下座で頼まれたって、もう帰らない。
あんたたちのところになんて。
僕も、僕を要らないと言う人なんて要らない。
背後でカチャリと鍵をかける冷たい音がした。
