ある配信者の半生 ー学歴至上主義の両親に捨てられた僕の物語ー


 ドキュメンタリー収録の日。

 照明の熱と観客の視線が交差するスタジオで、僕はインタビューに臨んだ。

 VTRで僕のブログと旅チャンネルが紹介されたあと、カメラが寄る。

 「ユウトさんは十八歳からおひとりでこんなに世界各地を巡っていたんですか? 何かきっかけがあったんでしょうか?」

 司会者が感心したように声を上げる。

「きっかけは……そうですね。親に捨てられたからです」

 スタジオが一瞬、静寂に包まれる。

 僕は少し間を置いてから、口を開いた。

「僕は……高校卒業した日、生まれ育った家を追い出されました」

 観客席がざわめいた。

 司会者やゲスト席にいた芸能人たちも、言葉を失う。

「入試に落ちたのがわかった瞬間。両親にこう言われました。『教師の子なのに無能。大学にも入れない。一家の恥さらしだ。絶縁するから卒業式の後すぐに出ていけ』と」

 僕は、ジャケットの内ポケットから一枚の紙を取り出した。

 あの日突きつけられた、絶縁状を。

 記した日付と僕の名前、親の署名も、しっかりと残っている。


 誰かが息を飲む音が、マイクに拾われたほどだった。
 ゲストのモデルが声をもらした。

「……ひどい。十八のこどもに、こんなの書かせて捨てるなんて。本当に教師なの!?」

 司会者が、恐る恐る尋ねる。

「それで、箱根に行って住み込みバイトをはじめたんですね?」
「はい」

 僕はカメラのほうを見て、静かに微笑んだ。

「帰る場所がないので、住み込みで働くしか道はなかったんです。僕を受け入れてくれた旅館の女将さんには、今でも感謝しています。僕がここにいるのは、女将さんのおかげです。本当に、ありがとう」


 僕の中にあるのは、拾ってくれたサエさんや、僕を教え導いてくれた先輩たちへの感謝。

 応援してくれたフォロワーのみんな。

 教師にならなくても僕は生きている。

 必要としてくれる人がいたから、ここに立っている。

 あの人たちが無価値だと言った学歴のない道を、恥ずかしいと思ったことは一度もない。