最初の給料が入った日。
僕は初任給でスマホを買った。
スマホのカメラを、初めて見る景色に向けていた。
湘南の海と空はどこまでも青くて、キラキラしている。
天気がいいから富士山も見えた。
世界の広さに比べたら、僕はすごく小さい存在なんだな。
こんなに離れたところからでも、富士山はあんなにも大きく見える。
次の休みは、あそこまで行ってみたい。
間近に見る富士山はどれくらい大きいんだろう。
街に出たついでに店に立ち寄り、きれいな花を買った。
宿に戻って、サエさんに渡す。
「お給料もらったら、一番にお礼しようって決めてたんだ。僕を拾ってくれてありがとう」
サエさんは目に涙を浮かべる。
「ありがとうね、ユウトさん。あなたががんばって得たお金なんだから、全部自分のほしいものに使ってくれてかまわないのに」
「うん。これが、一番使いたかった使い道だから」
金券は味気ないし、食べ物もなんだか違う。
考えた末に出た答えが、花束だった。
「なんだか孫が増えたみたいで嬉しいねぇ」
その花は玄関の花瓶にきれいに活けられて、サエさんはいつも以上に笑顔だった。
