僕はリュックに入れていた絶縁状を見せて、これまでのことを話した。
「僕、両親に言われてこの春に大学受験したんです。……そこで落ちちゃって」
殴られたときのことを思い出してしまって、言葉がつまった。
思い出すのも苦しい。
でも、言わないと。
「……そうしたら、両親から「無能は要らない、お前とは縁を切る」と言われて、追い出されたんです。……ずっと、言われていたんです。大学にストレート合格して、教員免許をとれって。僕は教師になりたいなんて、思ったことはないのに」
女将は最後まで話を聞いてくれて、静かに言った。
「辛かったんだねユウトさん。あなたはよくがんばったわ。もう心配いらないわ。うちにいなさい。ちょうど若い働き手が欲しかったの」
「……いいんですか?」
見上げると、女将は優しく微笑んでいる。
「もちろんよ。いくらでも仕事はあるんだから、手伝ってもらえたら嬉しいわ」
「……はい。ありがとうございます」
こうして僕は、温泉宿で働けることになった。
