当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 いいや。
 失言しなかったとしても結果は同じだ。
 俺が阿部に告白していたら、あの女子は阿部に嫌がらせをしただろう。
 俺の片思い相手が阿部だと知った途端、阿部に当たりがきつくなったんだから。

 どんな選択をしても、俺は阿部の隣に立てない。
 
 響司に託すのが正解なんだ。



「沢。どうした、ぼんやりして。これから借り物競走、整列だって。もうみんな先に行ってる」

「今行く! たしか、参加賞って食いもんあるんだろ。楽しみだな」


 響司に呼ばれて一歩踏み出す。

「お菓子はお客さん用だろ」

「えー、俺腹減ってんのに」

「これが終わったら昼休憩だから我慢我慢」


 響司は俺の嘘に気づいていない。

 阿部を笑顔にしてくれた友のために、俺は最後まで、『葉月ちゃんにひとめぼれした男』でいよう。