当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 入学式後のホームルーム。

 隣の席にいたのが響司だった。

 すごく背が高くて、どこのポジションなのか聞いたら「ポジションってなに?」と聞き返されてしまった。

「話しについていけなくてごめん。僕、ピアノしか弾いてこなかったから世間のこと疎くて」

 こういうのを浮世離れとでもいうのか。

「バスケだよ。バスケ」

「へぇ。運動が得意なんて羨ましい」

「いや、お前そんだけ背が高いんだから活かせよ。兼部でもいいからさ。バスケだとそれだけで有利なんだぞ。ダンクもできるし」

「ダンク?」

 バスケ自体まともに知らないなら、用語もわかるわけないか。

「バスケットのゴールはわかるよな。ジャンプして、あれに直接ボールを叩き込むんだ。背が低いとまずジャンプしてもあこまで届かない」

「あれをダンクっていうのか。勉強になったよ」

 納得したようにうなずいて、響司は申し訳なさそうに頭を下げる。

「せっかくさそってもらったのに、ごめん。ピアノの練習が最優先だから、何部であれ部活にまで割く時間はないんだ」

「そっか。まあ俺も、文化部と兼部しろって言われてもできねーもんな」

 俺がバスケを最優先にしたいのと同じで、響司にとってそれはピアノ。 

 おとなしくて、ひたすらピアノ好きな奴ということはじゅうぶんに伝わった。