当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 性格が合わない、というかちょっと苦手だと思っていた女子から告白された。

「好きな人がいるから無理」と断った。

 なのに、「相手が誰なのか教えてくれるまで諦めない」としつこく食い下がってくる。


 ──あまりに鬱陶しいから答えてしまった。


「俺は阿部が好きだから、諦めてくれ」

 それから、その女子と取り巻きが阿部に嫌がらせするようになった。

 あるとき、見てしまった。

 俺が振った女子が、廊下で阿部を突き飛ばした。
 そして、
「私の沢に近づくな!」
 などと勝手なことをほざく。

 阿部は何も言わず、黙って落とした教科書を拾った。

 物理的証拠が残らない、陰湿なやりくちだ。


 俺は阿部を守るどころか、結果的に加害者の背中を押してしまった。
 俺が、引き金を引いたんだ。

 そいつは俺達と別の高校に進学したから、これから先会うこともない。
 卒業式でもう一回告白しに来たが即断った。

 俺が、そいつのやらかしたことに気づいてないとでも思っていたのか。

「やっぱりあきらめきれないの」

 だなんて。
 どの面下げて再告白なんてするのか理解不能だった。