当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 翌日、新しい住人は町内にあいさつまわりしにきた。

 お父さんの後ろにかくれて、こっそりこちらを見る女の子。
 それが阿部華音だった。



 きれいな翠の目と金の髪。

 海みたいに真っ青なワンピースを着ていて……絵本の中のお姫様が飛び出してきたと思った。

 すごくかわいい。こんなかわいい子見たことがない。
 目が離せない。

 仲良くなりたくて、手を差し出した。


「俺、沢須直。あんた、なんてーの?」
「……?」

 女の子からの答えはない。

 言葉が通じていないっぽい。

 外国の子だからか?

「ごめんネ、スナオくん。向こうにいた頃、ほとんどドイツ語で話してたから。日本語は勉強中なんだ」

「へー。そうなんだ」

 お父さんが外国の言葉でなにか言って、ようやく女の子が答えた。

「あべ、かのん」

「阿部な。わかった」

 かのんだなんて、名前までお姫様っぽい。