当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 自己紹介もおわり、海岸に向かう。

 葉月と沢が浜への階段を駆け下りていく。

「せっかくそこらじゅうに砂があるんだ! でっかい城を作るぞー!」

「あはは。確かに、富士山だって作れちゃいそうだよね」

「いいじゃんそれ、やろうぜ!」

 僕と華音さんはゆっくり歩いて降りる。
 先を走っていく二人を見て、華音さんは小さく息を吐いて僕を見上げる。
 
「間違ってたら、ごめん。トーマくんて、葉月さんのこと好き?」

「…………なんで」

 ようやくしぼりだした声は、波の音にかき消されそうなほど小さく、かすれていた。

 誰にも打ち明けたことがないのに、初対面の子に気づかれるなんて。

「あたしと、同じ目をしてるから」