当て馬の矜持 ー嘘吐きな僕らの協奏曲《コンチェルト》ー

 それも一瞬のことで、葉月さんはパッと笑って頭をかく。

「なーんてね。あはは。中間で数学赤点だったからさ、つい。悪い点のテストなかったことにしたくて。ごめんね、変なこと言って」

「あー、アタシも英語二〇点だったから、なかったことにしたいー。ママにガチギレされたんだけどまじ最悪」

「わたしもー。ほぼ全滅だった」

「点数低い争いならアタシ学年一位とれるのにー」

「それな!」

 みんなが口々に中間テストのぼろぼろ具合をばくろする。

 ただの冗談には聞こえなかったから、あたしは聞き返す。
 
「葉月さんは、ほんとにもどっていいの? テストはやりなおせても、それまでのほかの時間も全部、なくなるよ」

 葉月さんはもう一度メッセージカードを眺めて、目を細めた。

「……そうだね。華音ちゃんの言うとおりだ。……楽譜と違って、時間は戻らないもん。だから、今を大事にしないといけないんだよね」